シリーズの新たな方向性:ダークな「ナイブズ・アウト」
ライアン・ジョンソン監督による人気ミステリーシリーズ「ナイブズ・アウト」の最新作、『Wake Up Dead Man』が、従来のコメディ要素を抑え、よりダークで重厚な作品として登場しました。これまでの『ナイブズ・アウト』や『グラス・オニオン』が、ユーモアと華やかな演出で観客を魅了してきたのに対し、本作はシリーズの新たな一面を提示しています。
ゴシックな舞台設定と複雑なプロット
物語の舞台は、ニューヨーク州北部の小さな町のゴシック様式の教会。陰鬱な天候が続く中、神父の殺害事件が発生します。世界的に有名な探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、この「鍵のかかった部屋の殺人」という難事件の捜査に挑みます。
登場人物は、元ボクサーの神父ジャド(ジョシュ・オコナー)、排他的な司祭ウィックス(ジョシュ・ブローリン)、政治インフルエンサーのサイ(ダリル・マコーマック)、SF作家のリー・ロス(アンドリュー・スコット)、そして教会の全てを知るマーサ(グレン・クローズ)など、個性豊かな面々が揃います。彼らが織りなす陰謀と秘密が、物語を一層複雑にしていきます。
ブノワ・ブランの内面と信仰の葛藤
本作で特に注目すべきは、ブノワ・ブランのキャラクターが深く掘り下げられている点です。従来の陽気なイメージとは異なり、彼はより怒りや脆弱さを見せ、その人間性が露わになります。宗教的な設定がブランに与える影響は大きく、彼自身の「事実と論理への揺るぎない信仰」に疑問を投げかけます。
また、ジャド神父との関係性も物語の重要な要素です。ジャドは事件を通じて信仰に揺らぎを覚え、ブランは論理の限界に直面します。二人の相互作用が、映画全体を通して緊張感と深みを生み出しています。
感動的な結末とシリーズの進化
これまでのシリーズのクライマックスが「満足感のある勝利」で終わることが多かったのに対し、本作は「許しと免罪の感動的な行為」で締めくくられます。もちろん、ジェフリー・ライトの短い出演や、容疑者たちの滑稽な行動など、シリーズお馴染みのユーモアも健在です。しかし、全体としてはより内省的で感情に訴えかける作品となっています。
『Wake Up Dead Man』は、単なる謎解き映画に留まらず、ブノワ・ブランというキャラクターの多面性を描き、シリーズに新たな奥行きを与えました。今後の「ナイブズ・アウト」シリーズがどのような展開を見せるのか、期待が高まります。本作はNetflixで12月12日よりストリーミング配信されます。
元記事: https://www.theverge.com/entertainment/840977/wake-up-dead-man-review-netflix-knives-out
