はじめに
SpaceXのテキサス州Starbase施設で新たなクレーン関連事故が発生し、労働安全衛生管理局(OSHA)が調査を開始しました。この事故で建設作業員が重傷を負い、Starbaseでは今年に入って2度目のクレーン関連の調査対象事案となります。
最新の事故詳細
11月、コンクリート壁建設中に作業員のEduardo Cavazos氏が、クレーンから落下した大型金属製支持材に押しつぶされる事故が発生しました。Cavazos氏は股関節、膝、脛骨を骨折する重傷を負い、首、頭、肩、背中、脚にも他の負傷を負いました。Cavazos氏の弁護士は、SpaceXと同社の下請け業者に対し、金属製支持材が適切に取り付けられていたか確認を怠り、現場の危険性について作業員に適切に警告しなかったとして、過失訴訟を提起しました。
SpaceXはこの事故をOSHAに報告しており、OSHAは「迅速対応調査」を開始しました。OSHAは現在、SpaceXからの追加情報の回答を待っています。
過去のクレーン事故と安全記録への懸念
今年6月下旬には、Starbaseで別のクレーンが倒壊する事故も発生しており、これもOSHAの調査対象となっています。この事故での負傷者の有無はまだ不明です。
Starbaseの安全記録については長年の懸念があります。2023年のロイターの報道では、多数の未報告の負傷者と、2014年の建設開始以来の死亡事故が明らかになりました。2024年のOSHAデータ分析によると、Starbaseの総記録可能災害率(TRIR)は労働者100人あたり約4.27件で、他のSpaceX施設(McGregor: 2.48、Hawthorne: 1.43)や航空宇宙製造業全体の平均(1.6)を大きく上回っています。元OSHA幹部は、このTRIRは「対処すべき深刻な安全問題があるという危険信号だ」と指摘しています。
また、SpaceXは今年6月、Starbaseでの別の重傷事故を報告しなかったとして、OSHAから7,000ドルの罰金を科されており、透明性の問題も浮上しています。
拡大計画と安全性への課題
SpaceXはStarbase施設の急速な拡大を進めており、2026年末までに2億5,000万ドルを投じて70万平方フィートの新ロケット工場「Gigabay」を建設する予定です。これにより年間最大1,000機のStarshipロケットを製造することを目指しています。しかし、NASAからの月ミッションの遅延に関する批判など、SpaceXへのプレッシャーが高まる中で、この急速な拡大と安全記録の改善が両立できるかが課題となっています。
