はじめに:AIの夢と現実のギャップ
ホリデーシーズンを迎え、MicrosoftはAIアシスタントCopilotの魅力をアピールする新たな広告キャンペーンを展開しています。この華やかな広告は、AIが日々のタスクをいかにスムーズに解決してくれるかを描いていますが、The VergeのライターであるAntonio G. Di Benedetto氏は、広告で示されたCopilotの能力が実際のユーザー体験と乖離しているのではないかという疑問を抱き、徹底した検証を行いました。
スマートホーム照明:架空の操作とAIの混乱
広告の一場面では、ユーザーが「ホリデーライトを音楽に同期させる方法」を尋ねると、Copilotが「Relecloud」という架空のスマートホームシステムのインターフェースを通じて、まるで実際に操作をガイドしているかのように描かれます。しかし、検証の結果、RelecloudはMicrosoftのケーススタディに登場する架空の企業であることが判明しました。
Di Benedetto氏が実際の照明インターフェースやPhilips Hueアプリを使って試したところ、Copilotは以下のような問題を露呈しました。
- 広告内の画像から推測して、誤ったクリック箇所を指示した。
- 実際には存在しないボタンや機能を「幻覚」として提示した。
- 画面上のハイライト機能は反応が遅く、的確なガイドができなかった。
Microsoftは広告の応答が「実際のCopilotの応答を短縮したもの」だと主張していますが、現実世界での実用性には大きな隔たりがあることが示唆されました。
指示の解読とレシピの調整:AIの限界露呈
広告では、「指示の解読」や「レシピの分量調整」といった日常的なタスクにおいてもCopilotの活躍が描かれています。
- 指示の解読:Di Benedetto氏がIKEAの棚の組み立て説明書をCopilotに見せると、Copilotはダボをネジと誤認したり、ページ番号を手順番号と取り違えたりと、基本的な理解に問題があることが浮き彫りになりました。
- レシピの調整:6人分のレシピを14人分に調整するよう依頼すると、Copilotは乗数を計算したものの、途中で計算に行き詰まり、残りの計算をユーザーに委ねたり、話題を変えようとしたりしました。また、ウェブサイトの「2x」「3x」ボタンを、細かく調整可能な増減ボタンだと誤解するなど、状況認識の甘さも露呈しました。
HOAガイドラインとサンタの皮肉:広告が認めた「幻想」
別の広告シーンでは、巨大なインフレータブルトナカイの設置に関して、HOA(住宅所有者協会)のガイドラインに違反しないかCopilotに確認させる場面があります。Copilotは「大規模なインフレータブルは敷地境界を越えてはならない」というルールは特定できましたが、トナカイの位置については「敷地を越えている可能性がある」といった曖昧な回答に終始し、最終的な判断をユーザーに委ねる結果となりました。
広告の最後に登場するサンタクロースが、おもちゃの生産遅延の理由をCopilotに尋ねると、「エルフがホットココアを飲みすぎたため」と答える場面は、Di Benedetto氏をして「この広告キャンペーン全体が幻想を売っていることを認めているようだ」と皮肉らせています。
結論:AIへの過度な期待は禁物
今回の検証は、Microsoftが宣伝するCopilotの華やかな能力と、現在のAIが提供できる現実との間に大きなギャップがあることを明確に示唆しています。Di Benedetto氏は、AIアシスタントに過度な期待を抱くことは、「サンタクロースを信じることと同じ」であると結論付けています。
IT業界ではAI技術の進歩が加速していますが、その現状と限界を正確に理解し、ユーザーが現実的な期待を持つことの重要性が改めて浮き彫りとなった形です。
元記事: https://www.theverge.com/report/847056/microsoft-copilot-ai-vision-pc-assistant-christmas-holiday-ad
