トランプ・モバイル:発表と複雑な組織構造
「トランプ・モバイル」の発表は大きな注目を集めましたが、その背後にある運営会社の構造は、想像以上に複雑であることが明らかになっています。トランプ・オーガナイゼーションが発表に関与した一方で、プレスリリースでは「トランプ・モバイルのチームと共に」という文言が使われ、独立した事業体であることが示唆されていました。
記事の注意書きには、その詳細が記されています。「トランプ・モバイル、その製品およびサービスは、トランプ・オーガナイゼーションまたはその関連会社、主要人物によって設計、開発、製造、配布、販売されるものではない。T1 Mobile LLCは、『Trump』の名称および商標を、その規約に従って終了または撤回される可能性のある限定的ライセンス契約に基づき使用している」と明記されており、これは、トランプ・モバイルの実際の運営は「T1 Mobile LLC」が行っており、トランプ・オーガナイゼーション自体は直接関与していないことを示しています。
商標ライセンス供与の構図
では、「トランプ」のブランド名はいかにして使用されているのでしょうか?商標「TRUMP SM」および関連するデザインは、DTTM Operations LLCが所有しています。このDTTM Operations LLCは、トランプ・オーガナイゼーションの一部門であり、主にトランプ氏の商標登録を管理する役割を担っています。
したがって、トランプ・オーガナイゼーションは、DTTM Operations LLCを通じて「トランプ・モバイル」関連の商標権を保有し、その商標をT1 Mobile LLCにライセンス供与しているという構図が浮かび上がります。これにより、「トランプ」のブランドを冠しながらも、運営の実務は別の企業が担う形となっています。
T1 Mobile LLCの正体と弁護士の関与
T1 Mobile LLCの実態は、さらなる謎を深めています。この会社は2025年4月にフロリダ州で登録されましたが、公記録にはパームビーチの住所しか記載されていません。その住所には、弁護士であるStuart Kaplan氏のオフィスがあり、彼がT1 Mobile LLCの登録代理人を務めていることが判明しています。
Kaplan氏はトランプ・モバイルの発表時にも積極的に関与し、X(旧Twitter)で「エリック・トランプとドン・ジュニア・トランプと提携した」と投稿していました。彼は元FBI特別捜査官であり、現在はリスク管理会社を経営しています。しかし、T1 Mobile LLC内での彼の具体的な役割、そして同社の真の所有者が誰であるのかは、依然として不明なままです。
核融合事業との関連性(そしてその否定)
このトランプ・モバイルの話題に、さらに複雑さを加えたのが、トランプ関連企業と核融合技術企業の合併のニュースでした。ソーシャルネットワーク「Truth Social」を運営するトランプ・メディア&テクノロジー・グループが、核融合技術企業TAE Technologiesとの合併を発表したことで、一部には携帯電話事業から核融合へと事業転換するのではないかとの憶測が流れました。しかし、記事はこの関連性を明確に否定しています。
トランプ・モバイルはトランプ・オーガナイゼーションが関与した事業であり、トランプ・メディア&テクノロジー・グループとは別個の企業体です。したがって、両事業の動向は直接的な関連性がなく、携帯電話事業の進捗と核融合事業の展開は、それぞれ独立した企業の動きであると結論付けられています。
残された透明性の問題
今回の調査により、トランプ・モバイルの実際の運営主体がT1 Mobile LLCであり、トランプ・オーガナイゼーションが商標をライセンス供与しているという構図が明らかになりました。しかし、T1 Mobile LLCの真の所有者や運営者は誰なのか、またトランプの息子たちが日々の運営にどの程度関与しているのかといった肝心な点は、依然として不透明なままです。
このような透明性の欠如は、ITニュースとしての信頼性にも関わる重要な問題です。The Vergeは、トランプ・モバイル、トランプ・オーガナイゼーション、Stuart Kaplan氏のいずれからも、現時点ではコメントを得られていないと報じています。
元記事: https://www.theverge.com/tech/848029/trump-mobile-ownership-structure-licensing
