テスラ、一時的な販売好調の裏に潜む不確実性:税額控除終了とAIへの賭け

一時的な販売好調の背景

テスラは、連邦EV税額控除の期限切れを前にした駆け込み需要により、今年初めて四半期販売台数を増加させました。同社は2025年7月から9月の間に合計497,099台の車両を納車し、これは2024年第3四半期と比較して7.4%の増加となります。特にModel 3とModel Yが481,166台を占め、残りの15,933台がModel S、Model X、Cybertruckなどの「その他の車両」でした。

この好調な納車台数は、9月30日に失効した7,500ドルの連邦EV税額控除を消費者が利用しようと急いだ結果と見られています。これにより、テスラは上半期に積み上がっていた過剰な在庫を削減することに成功しました。しかし、生産台数を見ると、同期間に447,450台を生産しており、これは2024年第3四半期の469,796台と比較して5%の減少となっています。

海外市場の課題と今後の見通し

米国での一時的な販売好調とは対照的に、テスラの海外市場は厳しい状況にあります。欧州では、前年同期比で年初来37%減となっており、中国市場でもBYDやGeelyといった国内メーカーとの競争激化により低迷が続いています。

専門家は、税額控除の終了後、米国でのEV販売が劇的に落ち込むと予測しており、テスラにとって今回の好調は「一時的な明るい兆し」に過ぎない可能性が高いと指摘しています。イーロン・マスク氏自身も、税額控除の終了やその他のマクロ経済的要因により、「数四半期は厳しい状況になる」と述べています。

AIとロボティクスへの大胆な転換とリスク

テスラは、老朽化したラインナップとブランドイメージの課題を抱える現在のEV事業から、AIとロボティクスを主軸とする未来へと舵を切ろうとしています。マスク氏は、ロボタクシーや人型ロボットといったAI計画が実現すれば、テスラは回復すると信じています。彼は、2025年末までに米国人口の50%がテスラのロボタクシーを利用できるようになると豪語していますが、現状ではオースティンとサンフランシスコでのみ利用可能です。

この販売報告は、マスク氏の新たな報酬パッケージ案が浮上した直後に出されました。この案が承認されれば、彼は世界初の兆万長者になる可能性がありますが、そのためには100万台のロボット生産、100万台のロボタクシー生産、テスラ株主のために7.5兆ドルの価値創出といった野心的な目標を達成する必要があります。株主総会は11月6日に開催されます。

また、テスラは最近、日々のEV事業からAIとロボティクスに焦点を移す「マスタープラン」の最新版を発表しました。しかし、これらのシフトは「実現したとしても数年先」であり、現在の環境下でテスラが直面する課題を解決するまでには時間がかかると見られています。同社は、ベストセラーであるModel Yの廉価版を2025年後半に量産開始する計画を以前発表していましたが、その進捗についてはまだ情報がありません。


元記事: https://www.theverge.com/news/790046/tesla-q3-2025-sales-production-delivery