スパイウェア企業NSOグループ、新たな透明性レポートに批判殺到
政府向けスパイウェアで悪名高いNSOグループが、米国市場参入を目指す中で発表した最新の透明性レポートが、各方面から厳しい批判に晒されています。同社はこれを「説明責任の新段階」と位置づけていますが、専門家や批評家からは「ごまかしに過ぎない」との声が上がっています。
米国市場参入への戦略と「エンティティ・リスト」解除の試み
今回のレポート発表は、NSOグループが米国政府の「エンティティ・リスト」(事実上の禁輸措置リスト)からの解除を強く働きかける動きの一環と見られています。同社は昨年、米投資家グループに買収されて以来、経営陣の刷新を進めており、ドナルド・トランプ元政権関係者のデビッド・フリードマン氏が新たな執行役会長に就任。CEOのヤロン・ショハト氏や創業者のオムリ・ラヴィ氏も退任しています。
フリードマン氏はレポートで「NSOの製品が適切な国々の適切な手に渡れば、世界ははるかに安全な場所になる」と述べ、同社の使命を強調しました。これは、米国政府に対し、同社が劇的に変化したことを示すためのキャンペーンであると、デジタル権利団体Access Nowのシニア技術顧問ナタリア・クラピヴァ氏は指摘しています。
詳細を欠く「透明性」レポート
しかし、今回のレポートが過去のものと決定的に異なるのは、その情報の少なさです。2025年を対象とするこのレポートには、これまで記載されてきた以下の重要な詳細が欠けています。
- 人権侵害を理由に拒否、調査、停止、または終了した顧客の数
- ミスの可能性を調査した件数
- 人権懸念により却下したビジネス機会の金額
- 顧客の総数
例えば、2024年を対象とした前回のレポートでは、NSOは3件の誤用疑惑を調査し、1件の顧客との関係を断ち切り、別の顧客には人権トレーニングの義務付けや活動監視などの「代替是正措置」を課したと報告していました。また、2024年には人権懸念により2,000万ドル以上の新規ビジネス機会を拒否したとも述べていました。しかし、今回のレポートでは、これらの具体的な数字や事例は一切示されていません。
専門家からの厳しい批判
長年にわたりスパイウェアの悪用を調査してきた人権団体The Citizen Labのシニア研究員ジョン・スコット・レイルトン氏は、NSOの主張について「部外者がNSOの主張を検証できるものは何もこの文書にはない」と強く批判。クラピヴァ氏も「NSOや他のスパイウェア企業が名前やリーダーシップを変え、内容のない透明性レポートや倫理レポートを発表しても、悪用が続いていることをこれまで何度も見てきた」と述べ、今回のレポートを「単なる見せかけ」と断じています。
トランプ政権が昨年末にインテレクサ・スパイウェア連合に関連する3人の幹部に対する制裁を解除したことは、一部でスパイウェア企業に対する政権の姿勢の変化と見られていますが、NSOグループが米国市場への道を切り開くには、今回の「透明性」レポートだけでは不十分であるという見方が支配的です。
