アンカー傘下のEufy、AI学習用にユーザー動画を2ドルで買い取り – プライバシー懸念が浮上

Eufy、AI学習データ収集でユーザーに報酬

中国のAnkerが展開するセキュリティカメラブランド「Eufy」が、AIモデルのトレーニングを目的として、ユーザーから動画を収集し、報酬を支払っていたことが明らかになりました。同社は、パッケージや車の盗難に関する動画に対し、1本あたり2ドルを支払うキャンペーンを実施していました。

Eufyは、AIが泥棒をより効果的に検出できるようトレーニングするため、「十分なデータを確保するため、実際のイベントと演出されたイベントの両方の動画を求めている」と説明。さらに、「泥棒のふりをしてイベントを作成し、それらを寄付することもできる」と、ユーザーに自ら盗難シーンを演出するよう推奨していました。同社は、収集されたデータはAIアルゴリズムのトレーニングのみに使用され、他の目的には使用されないと強調しています。

データ収集の背景とプライバシーリスク

この取り組みは、企業がAIモデルの学習に役立つと考えるユーザーデータに対して、報酬を支払う意欲があることを示しています。これにより、ユーザーは自身のデータから価値を得る機会がある一方で、セキュリティとプライバシーに関する重大なリスクも伴います。

その一例として、昨年には、ユーザーが通話記録やその書き起こしを共有することで報酬を得られるバイラル通話アプリ「Neon」で、他のユーザーのデータにアクセスできるセキュリティ上の欠陥が発覚し、同アプリはサービス停止に追い込まれる事態となりました。

大規模な動画収集とEufyの対応

Eufyの動画収集キャンペーンは、2024年12月18日から2025年2月25日まで実施されました。同社の目標は、パッケージ盗難と「車のドアを引く」動画をそれぞれ2万本ずつ収集することでした。参加ユーザーはGoogleフォームを通じて動画をアップロードし、PayPalで報酬を受け取る仕組みでした。

しかし、TechCrunchがEufyに対し、キャンペーンの参加者数、支払総額、収集された動画の総数、AIシステムトレーニング後に動画が削除されたかどうかなどについて問い合わせたところ、同社からの回答は得られませんでした。

継続する動画寄付プログラムと過去の不信

Eufyはその後も、AIシステム改善のための「動画寄付プログラム」をアプリ内で継続しており、ユーザーには「見習いメダル」のようなバッジから、カメラやギフトカードといった報酬が提供されています。現在のキャンペーンでは、人間が関与する動画に焦点を当てています。

アプリ内には、最も多くの動画イベントを寄付したユーザーをランキング形式で表示する「名誉の壁」があり、トップのユーザーは20万本以上の動画を寄付しているとされています。Eufyは、このプログラムにおいても「寄付された動画はAIトレーニングと改善にのみ使用され、第三者に提供されることはない」と明言しています。

しかし、Eufyのプライバシー保護へのコミットメントには、過去の経緯から疑問符がついています。2023年には、同社がエンドツーエンド暗号化を宣伝していたにもかかわらず、ウェブポータル経由でカメラのストリームが暗号化されずにアクセス可能だった事実を隠蔽しようとしたことがThe Vergeによって報じられました。Ankerはその後、ユーザーを誤解させたことを認め、問題の修正を約束しています。このような過去の事例は、ユーザーデータの取り扱いに関するEufyの透明性と信頼性について、引き続き注意を払う必要があることを示唆しています。


元記事: https://techcrunch.com/2025/10/04/anker-offered-to-pay-eufy-camera-owners-to-share-videos-for-training-its-ai/