プリンス・アンドルー顧問、エプスタイン氏にEVスタートアップ投資を提案していたことが判明

エプスタイン文書が明かすEV投資の裏側

新たに公開された文書により、プリンス・アンドルー氏の顧問だったデイビッド・スターン氏が、有罪判決を受けた性犯罪者であるジェフリー・エプスタイン氏に対し、電気自動車(EV)スタートアップへの投資を積極的に働きかけていたことが明らかになりました。TechCrunchが報じたところによると、その対象にはLucid MotorsFaraday Future、そしてCanooといった著名なEV企業が含まれていました。

2017年、Lucid Motorsが資金調達に奔走していた時期、スターン氏はエプスタイン氏に対し「フォードがLucidの4億ドル規模のシリーズDラウンドを主導する可能性が高い」とメールで伝え、Faraday Futureの創業者である賈躍亭(Jia Yueting)氏が抱える財政問題を指摘し、エプスタイン氏がLucidの株式を取得する機会があると示唆していました。しかし、エプスタイン氏がこれらの企業に実際に投資した可能性は低いとされています。

謎に包まれた人物、デイビッド・スターン氏

デイビッド・スターン氏は、インターネット上での情報がほとんどなく、「デジタルゴースト」と形容される人物です。彼は、プリンス・アンドルー氏が主催していた「Pitch @Palace」というスタートアップコンテストのディレクターを務めていたことで知られています。アンドルー氏自身も2010年のメールでスターン氏を「ゴースト」と呼んでいたほどです。

スターン氏は、ドイツ出身で、1990年代後半にロンドン大学と中国の師範大学で学び、シーメンスやドイツ銀行上海支店での勤務経験があります。彼は中国の有力なビジネスマンや政治家とのコネクションを築き、特に賈躍亭氏の義理の息子である李伯丹氏ともつながりがありました。

深まる関係と多岐にわたる投資提案

スターン氏とエプスタイン氏の関係は、2008年、エプスタイン氏が未成年者買春で有罪判決を受けるわずか1ヶ月前に始まりました。スターン氏は中国市場をターゲットにしたファンド「AGC Capital」への投資をエプスタイン氏に持ちかけます。その後、2009年からは、スターン氏はエプスタイン氏を「私のメンター」と呼び、エプスタイン氏からは「私の中国の連絡役」と呼ばれ、両者の関係は深まっていきました。

この約10年間にわたり、スターン氏はエプスタイン氏に対し、EVスタートアップ以外にも、多岐にわたるビジネス機会を提案しています。例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 中国企業への共同投資ファンド「JEDS」の設立
  • ロシアの農地の購入
  • ニュースメディア「アルジャジーラ」の買収と上場
  • 音楽出版社EMIの買収
  • ルクセンブルクのプライベートバンク、Sal. Oppenheimの買収
  • ドイツ銀行の買収

スターン氏はエプスタイン氏に対し、当時のJPモルガン投資銀行責任者だったジェス・ステイリー氏とマレーシアの政治家アンワル・イブラヒム氏の会合を提案したり、ジャック・マー氏との会食やUAE大統領との面会を匂わせるなど、自らの幅広い人脈をアピールしていました。

EV市場への熱い視線と具体的な案件

2017年に入ると、スターン氏は特に新興モビリティ企業の台頭に目をつけ、エプスタイン氏に積極的にEVスタートアップへの投資を促します。

彼はまず、Faraday Futureの創業者である賈躍亭氏との会合を画策。その後、元BMWおよびドイツ銀行CFOのステファン・クラウス氏(スターン氏の友人でありビジネスパートナー)が、財政難に陥っていたFaraday Futureへの投資をエプスタイン氏に直接訴えかけています。クラウス氏は、「Faraday Futureは素晴らしい物語だが、賈躍亭氏の他の事業の問題で資金繰りに苦しんでいる。これはより良いテスラを築く絶好のチャンスだ」と述べていました。

これらの会話が立ち消えになった後、スターン氏はLucid Motorsに狙いを定めます。2017年5月、スターン氏が設立したファンド「Monstera」によるLucidの株式取得提案がエプスタイン氏の元に届きます。Monsteraは賈躍亭氏が保有するLucidの32%の株式を3億ドルで取得し、「フォードが参入する際に売却する」という「火事場のセール」としての投資機会を提案しました。

また、クラウス氏が2017年後半に新たに設立したEV企業Canooにもスターン氏は初期の出資者として名を連ね、2018年6月にはエプスタイン氏に同社の資料を送付し、「面白い」との返答を得ています。

しかし、エプスタイン氏がこれらのEV企業に実際に投資した記録はありません。彼は代わりに、知人のディパック・チョプラ氏やイタリアのビジネスマン、エドゥアルド・テオドラニ氏、カタール王族のシェイク・ジャボール・アル・タニ氏など、影響力のある人物に対し、スターン氏のEV企業(Canoo)を紹介していました。

エプスタイン氏の逮捕と関係の終焉

2019年6月、エプスタイン氏はカタール王族にスターン氏のEV企業を紹介したわずか1週間後に逮捕されました。彼はその1ヶ月後に獄中で死亡し、スターン氏との約10年にわたる関係は幕を閉じます。スターン氏はエプスタイン氏が逮捕される直前の2019年3月にも、「ウォーレン・バフェット:電気自動車はアメリカの未来そのものだ」という記事を転送し、「どうやって彼(バフェット)を巻き込むか?」とメッセージを送るなど、その活動は逮捕直前まで続いていたことが示されています。


元記事: https://techcrunch.com/2026/02/06/prince-andrew-advisor-pitched-jeffrey-epstein-on-investing-in-ev-startups-like-lucid-motors/