コロラド州の山岳都市、AIを活用した山火事対策とスマートシティ化を推進

AIを活用した山火事検知の導入

コロラド州の人気スキーリゾート地であるベイルが、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)の新たなAIスマートシティソリューションを導入し、山火事の検知能力を強化するとともに、様々な都市サービスを刷新します。気候変動による高温乾燥な気候が米国西部における山火事のリスクを高める中、ベイルは消防体制の強化を図っています。過去5年間で、コロラド州の歴史上20件の最大規模の火災のうち11件が発生しており、研究者や初期対応者はAIツールを活用して火災に先手を打つ方法を模索しています。

ベイルの町長ラッセル・フォレスト氏は、「山火事は今や私たちの生活の一部であり、備えなければなりません」と述べています。今年7月に約30マイル離れた場所で発生した山火事を監視していた際、フォレスト氏は火災の迅速な検知と対応が、将来の火災管理において大きな違いを生むと痛感し、HPEおよびAIオーケストレーションプラットフォームを開発したKamiwaza社と連携しました。

新システム「HPEスマートシティソリューション」の機能

ベイルは、米国で初めてHPEの新しい「スマートシティソリューション」を導入する自治体となります。このソリューションはKamiwaza、Nvidia、および他の複数のテクノロジー企業と共同で開発されました。その目的は、町が既にバスや山頂の監視地点に設置しているカメラから得られる映像の分析を迅速かつ容易にすることです。これまでは、人間が映像を分析し、煙か霧かを判断するのに苦労することもありました。しかし、AI強化システムは、必要に応じて画像の忠実度を向上させ、ビデオ分析を適用することができます。

HPEのAIおよびハイブリッドクラウド事業開発担当副社長であるロビン・ブラウン氏によると、このシステムは雷撃や煙をリアルタイムで識別するよう訓練されています。さらに、Kamiwazaプラットフォームは、積雪の有無やレッドフラッグ警報の発令状況といった気象情報など、追加のコンテキストを付加し、事態の深刻度と対応方法を判断します。また、Blackshark.aiが提供する地理空間データ分析もスマートシティシステムに組み込まれており、ドローンや衛星画像を利用して植生の乾燥度や健全性を評価し、火災リスクを測定するほか、火災の危険がある低木が住宅にどれだけ近いかを把握し、除去すべき場所を特定します。

エネルギー消費と持続可能性への配慮

AIを活用した火災検知への期待が高まる一方で、エネルギーを大量に消費するAIデータセンターの急増が、新たな化石燃料プロジェクトの増加につながり、気候変動を悪化させることで山火事を助長する可能性があるという懸念も存在します。フォレスト町長は、この新しいプログラムを導入する前にエネルギー需要についても検討したと述べています。

HPEのスマートシティプラットフォームは、主に再生可能エネルギーで稼働する近隣のデータセンターで運用されます。このデータセンターは、地元の電力会社であるHoly Cross Energyから電力を供給されており、同社は2024年にはポートフォリオの76%が再生可能エネルギー(主に風力)で構成されていると発表しています。これは、米国全体の再生可能エネルギー比率(約20%)よりもはるかに高い割合です。

山火事対策以外のスマートシティ活用

山火事の検知と予防は、HPEのスマートシティプラットフォームの一側面に過ぎません。ベイルは、住宅許可や事業免許申請の審査、自治体ウェブサイトの連邦法に基づくアクセシビリティ要件への準拠など、行政業務の効率化にもこのプラットフォームを活用する計画です。公共図書館には新しい「デジタルコンシェルジュ」が導入され、住民や訪問者への情報提供を支援します。人口わずか4,300人のこの町は、スキーシーズンには1日最大30,000人の訪問者で賑わうため、AIプラットフォームが職員の負担を軽減し、より喫緊の優先事項に取り組む時間を確保することが期待されています。


元記事: https://www.theverge.com/report/809348/ai-fire-detection-vail-hpe-smart-city-platform