2025年のAI投資動向:大型資金調達が過去最高水準に
2025年、米国AI業界は前年に続き記録的な投資を経験しました。TechCrunchの集計によると、1億ドル以上の大型資金調達(メガラウンド)を達成したスタートアップは49社に上り、2024年の実績と肩を並べました。特筆すべきは、複数のメガラウンドを実施した企業が大幅に増加した点です。これは、AI分野におけるイノベーションへの投資家の強い信頼と、市場の急速な成長を示しています。
月別の主要資金調達企業
11月
- Anysphere: バイラルコーディングプラットフォーム「Cursor」の開発企業。23億ドルを調達し、評価額は293億ドルに。今年2度目の資金調達となりました。
- Parallel: AIエージェント向けウェブインフラを構築。1億ドルのシリーズAラウンドを実施しました。
- Hippocratic AI: ヘルスケアAIエージェントのスタートアップ。1億2,600万ドルのシリーズCラウンドを調達し、評価額は35億ドルに。今年2度目の資金調達です。
10月
- Fireworks AI: オープンソースモデルでAIアプリケーション構築を可能にするプラットフォーム。2億5,000万ドルのシリーズCラウンドを調達し、評価額は40億ドルとなりました。
- Uniphore: エンタープライズAIスタートアップ。2億6,000万ドルのシリーズFラウンドで評価額25億ドルに。
- Sesame: 音声AI企業。2億5,000万ドルのシリーズBラウンドを完了。
- OpenEvidence (ケンブリッジ、マサチューセッツ州): 医療分野向けAIチャットボットを開発。2億ドルのシリーズCラウンドを調達し、評価額は60億ドル。今年2度目の資金調達です。
- Lila Sciences: 科学スーパーインテリジェンスプラットフォームを目指す企業。3億5,000万ドルのシリーズAラウンドを実施し、今年2度目の資金調達となりました。
- Reflection AI: DeepSeekの競合企業。20億ドルのシリーズBラウンドで評価額は80億ドルに。今年2度目のメガラウンドです。
- EvenUp: 人身傷害法律分野向けAIを開発。1億5,000万ドルのシリーズEラウンドで評価額20億ドル以上となりました。
9月
- Periodic Labs: AI科学者の構築を目指す。3億ドルのシードラウンドを完了。
- Cerebras Systems: AIインフラ企業。11億ドルのシリーズGラウンドを調達し、評価額は81億ドルとなりました。
- Modular: 2億5,000万ドルの資金調達ラウンドを実施。
- Distyl AI: AIエンタープライズソフトウェアを開発。1億7,500万ドルのシリーズBラウンドで評価額18億ドル。
- Upscale AI: AIインフラスタートアップ。1億ドルのシードラウンドを調達。
- Groq: AI推論企業。7億5,000万ドルのシリーズEラウンドを調達し、評価額は69億ドル近くとなりました。
- Invisible Technologies: AIトレーニングスタートアップ。1億ドルの資金調達で評価額20億ドルに。
- Cognition AI: コーディングエージェント「Devin」の生みの親。4億ドルのシリーズCラウンドを調達し、評価額は102億ドルとなりました。
- Baseten: AIインフラスタートアップ。1億5,000万ドルのシリーズDラウンドで評価額21億ドル。
- Sierra (Bret Taylor氏の顧客サービスAIエージェントプラットフォーム): 3億5,000万ドルを調達し、評価額は100億ドル以上となりました。
- You.com: パーソナライズされたAI検索エンジン。1億ドルのシリーズCラウンドを実施し、評価額は15億ドル。
- Anthropic: AI研究ラボ。130億ドルのシリーズFラウンドを調達し、評価額は1830億ドルに。今年2度目の資金調達です。
8月
- EliseAI: ヘルスケアおよび住宅自動化プラットフォーム。2億5,000万ドルのシリーズEラウンドで評価額22億ドル。
- Decart: AI研究ラボ。1億ドルを調達し、評価額31億ドル。
7月
- Fal: 生成AIメディアプラットフォーム。1億2,500万ドルのシリーズCラウンドで評価額15億ドル。
- Ambience Healthcare: AIヘルスケアOSを構築。2億4,300万ドルのシリーズCラウンドを調達。
- Reka AI: AI研究ラボ。1億1,000万ドルを調達し、評価額10億ドル。
- Thinking Machines Lab: AI研究ラボ。20億ドルのシードラウンドを調達し、評価額120億ドル。
- OpenEvidence (ケンブリッジ、マサチューセッツ州): 臨床医向けAI検索ツールを構築。2億1,000万ドルを調達し、評価額35億ドル。
- Harmonic: 数学的推論エンジンを構築。1億ドルのシリーズBラウンドを調達し、評価額8億7,500万ドル。
6月
- Abridge: ヘルスケアAIユニコーン。3億ドルのシリーズEラウンドを調達し、評価額53億ドル。今年2度目の資金調達です。
- Harvey: 法務業界向けAIツールを開発。3億ドルのシリーズEラウンドを調達し、評価額50億ドル。今年2度目の資金調達です。
- Tennr: ヘルスケアAIスタートアップ。1億100万ドルのシリーズCラウンドを調達し、評価額6億500万ドル。
- Glean: エンタープライズ検索スタートアップ。1億5,000万ドルのシリーズFラウンドを調達し、評価額72億5,000万ドル。
- Anysphere: AIコーディングツール「Cursor」のAI研究ラボ。9億ドルのシリーズCラウンドを調達し、評価額100億ドル近く。
5月
- Snorkel AI: AIデータラベリングスタートアップ。1億ドルのシリーズDラウンドを調達し、評価額13億ドル。
- LMArena: AIモデルのコミュニティ主導ベンチマークツール。1億ドルのシードラウンドを調達し、評価額6億ドル。
- TensorWave: AIインフラ企業。1億ドルのシリーズAラウンドを調達。
4月
- SandboxAQ: AIモデル企業。4億5,000万ドルのシリーズEラウンドを完了し、評価額57億ドル。
- Runway: メディア制作向けAIモデルを開発。3億800万ドルのシリーズDラウンドを調達し、評価額30億ドル。
3月
- OpenAI: AI巨大企業。400億ドルの記録的資金調達ラウンドを完了し、評価額は3000億ドル。
- Nexthop AI: AIインフラ企業。1億1,000万ドルのシリーズAラウンドを調達。
- Insilico Medicine (ケンブリッジ、マサチューセッツ州): 生成AIを活用した創薬プラットフォーム。1億1,000万ドルのシリーズEラウンドを調達し、評価額10億ドル。
- Celestial AI: AIインフラ企業。2億5,000万ドルのシリーズCラウンドを調達し、評価額25億ドル。
- Lila Sciences: 科学スーパーインテリジェンスプラットフォームを構築。2億ドルのシードラウンドを調達。
- Reflection.Ai (ブルックリン): 超知能自律システムを構築。1億3,000万ドルのシリーズAラウンドを調達し、評価額5億8,000万ドル。
- Turing: AIコーディングスタートアップ。1億1,100万ドルのシリーズEラウンドを完了し、評価額22億ドル。
- Shield AI: AI防衛技術スタートアップ。2億4,000万ドルのシリーズFラウンドを調達し、評価額53億ドル。
- Anthropic: AI研究および大規模言語モデル企業。35億ドルのシリーズEラウンドを調達し、評価額615億ドル。
2月
- Together AI: オープンソース生成AIおよびAIモデル開発インフラ。3億500万ドルのシリーズBラウンドを調達し、評価額33億ドル。
- Lambda: AIインフラ企業。4億8,000万ドルのシリーズDラウンドを調達し、評価額25億ドル近く。
- Abridge: 患者と臨床医の会話を記録するAIプラットフォーム。2億5,000万ドルのシリーズDラウンドを調達し、評価額27億5,000万ドル。
- Eudia: AI法務技術企業。1億500万ドルのシリーズAラウンドを調達。
- EnCharge AI: AIハードウェアスタートアップ。1億ドルのシリーズBラウンドを調達。
- Harvey: AI法務技術企業。3億ドルのシリーズDラウンドを調達し、評価額30億ドル。
1月
- ElevenLabs: 合成音声スタートアップ。1億8,000万ドルのシリーズCラウンドを調達し、評価額30億ドル以上。
- Hippocratic AI: ヘルスケア業界向け大規模言語モデルを開発。1億4,100万ドルのシリーズBラウンドを調達し、評価額16億ドル以上。
顕著なトレンドと注目企業
2025年のAI投資トレンドは、複数のメガラウンドを達成した企業の増加に象徴されます。特に、Anysphere、Hippocratic AI、OpenEvidence、Reflection AI、Abridge、Harvey、そしてLila Sciencesといった企業は、年に複数回の大型資金調達に成功し、その成長性と投資家からの期待の高さを示しました。
セクター別では、AIインフラ、ヘルスケアAI、法務テックAI、そして高度なAI研究開発が特に活発でした。また、OpenAIが記録的な400億ドルを調達し、評価額3000億ドルに達したのを筆頭に、Anthropicの130億ドル、Anysphereの23億ドル、Reflection AIとThinking Machines Labのそれぞれ20億ドルなど、数十億ドル規模の超大型ラウンドが複数報告されました。
今後の展望
2025年に見られたAIスタートアップへの旺盛な投資は、この分野の技術革新が加速し、実用化と市場拡大が進んでいることを明確に示しています。特に、繰り返し資金を調達している企業や、数十億ドル規模の評価額に達する企業が相次いでいることは、AIが経済と社会に与える影響が今後さらに大きくなることを示唆しています。これらの投資が、次なるAIブレークスルーをどのように推進していくのか、今後の動向が注目されます。
