re:Invent 2025の主要テーマ:エンタープライズAIが中心
Amazon Web Services(AWS)の年次技術カンファレンス「AWS re:Invent 2025」が閉幕しました。今回の主要メッセージは、多数の製品ニュースや基調講演の中でも一貫して「エンタープライズ向けAI」に集約されました。今年は、顧客がAIエージェントをより細かくカスタマイズし、さらにAWSが数日間自律的に学習・作業できると主張するエージェントも発表されるなど、顧客へのより高度な制御を提供するアップグレードが目立ちました。
最終夜のキーノートでは、Amazon CTOのWerner Vogels氏が開発者を鼓舞し、AIがエンジニアリングの仕事を奪うという懸念を払拭する狙いのスピーチを行いました。
AIエージェントの進化と新発表
AWS re:Invent 2025は、AWS CEOのMatt Garman氏のキーノートで幕を開けました。Garman氏は、AIエージェントがAIの「真の価値」を解き放つという考えを強調し、次のように述べました。「AIアシスタントは、タスクを実行し、ユーザーに代わって自動化できるAIエージェントへと進化し始めています。これにより、AIへの投資から具体的なビジネスリターンが得られるようになります。」
Agentic AI担当副社長のSwami Sivasubramanian氏もまた、AIエージェントの可能性について熱弁を振るいました。「歴史上初めて、私たちは自然言語で達成したいことを記述でき、エージェントは計画を生成し、コードを書き、必要なツールを呼び出し、完全なソリューションを実行します。エージェントは、アイデアからインパクトまでのスピードを大幅に加速させ、無限の構築の自由を与えてくれます。」
- AgentCoreの機能拡張: AIエージェントの境界設定を容易にする「Policy」機能、ユーザーに関する情報を記録・記憶する機能、13種類の事前構築済み評価システムが発表されました。
- 新しいAIエージェント「Frontier agents」: コードを記述し、チームの働き方を学習して数時間から数日間自律的に動作する「Kiro自律エージェント」が発表されました。これには、セキュリティプロセス(コードレビューなど)やDevOpsタスク(新しいコード投入時のインシデント防止など)を処理するエージェントも含まれます。
- Lyftの成功事例: 配車サービスLyftは、Amazon Bedrock経由でAnthropicのClaudeモデルを利用し、ドライバーと乗客の問い合わせを処理するAIエージェントを導入しました。これにより、平均解決時間が87%削減され、ドライバーによるAIエージェントの利用が今年70%増加したと報告されています。
Werner Vogelsの最終キーノートとAIが仕事に与える影響
Amazon CTOのWerner Vogels氏は、今回が自身にとって最後のre:Inventキーノートとなることを発表しましたが、同社を去るわけではないと付け加えました。「14回のre:Inventを経て、皆さんは若く、新鮮な新しい声を聞くべきだと感じています。」と述べ、約1時間にわたり講演を行いました。
Vogels氏はまた、AIが仕事に与える影響についても言及し、AIが仕事を奪うという差し迫った脅威について語りました。彼は「AIは私の仕事を奪うのか? おそらく」と問いかけ、一部のタスクは自動化され、一部のスキルは時代遅れになるだろうと指摘しました。しかし、「この質問を再構築すべきかもしれません。AIは私を時代遅れにするのか? あなたが進化すれば、絶対にしない。」と締めくくりました。
新しいチップとAI/MLの強化
AWSは、ハードウェアとAI/MLサービスの両面で大幅な強化を発表しました。
- 次世代CPU Graviton5: 192個のプロセッサコアを搭載し、AWS史上最高のパフォーマンスと効率性を誇るとされる次世代チップ。データ伝送距離を短縮し、コア間通信のレイテンシを最大33%削減し、帯域幅を向上させます。
- AIトレーニングチップ Trainium3とUltraServer: 新しいAIトレーニングチップTrainium3と、これを搭載するAIシステムUltraServerを発表。AIトレーニングと推論の両方で最大4倍の性能向上と、エネルギー使用量を40%削減することを約束しています。さらに、Trainium4の開発も進行中であり、Nvidiaのチップと連携できるようになる予定です。
- LLM開発ツールの強化: 企業顧客が独自のモデルを構築するためのツールを強化。特に、Amazon BedrockとAmazon SageMaker AIに新機能を追加し、カスタムLLMの構築を容易にします。SageMakerにはサーバーレスモデルカスタマイズ機能が導入され、BedrockにはReinforcement Fine Tuningが提供されます。
- NovaモデルとNova Forgeサービス: 新しいAIモデルファミリー「Nova」から、テキスト生成モデル3種とテキスト・画像生成モデル1種を含む4つの新モデルを発表。さらに、AWSクラウド顧客が事前学習済み、中間学習済み、または事後学習済みモデルにアクセスし、独自のデータで追加学習できる新サービス「Nova Forge」も導入されました。
- AI Factories: 大企業や政府機関がAWS AIシステムを自社データセンターで実行できるようにする「AI Factories」を発表。これはNvidiaとの提携で設計され、データ主権の要件を持つ顧客に対応します。
コスト削減とスタートアップ支援
その他の重要な発表として、コスト削減とスタートアップ支援の取り組みがありました。
- Database Savings Plans: データベースコストを最大35%削減する新しいプラン。1年間の使用量(ドル/時間)をコミットすることで、適格なデータベースサービス全体で自動的に割引が適用されます。
- Kiro Pro+の無料クレジット: Amazonは、AIコーディングツール「Kiro Pro+」の無料クレジットを、対象となるスタートアップに1年間提供すると発表しました。これは、スタートアップの心を掴むための戦略です。
元記事: https://techcrunch.com/2025/12/04/all-the-biggest-news-from-aws-big-tech-show-reinvent-2025/
