OpenAIがGoogleに対抗しGPT-5.2を発表、「コードレッド」後の巻き返しなるか

はじめに:AI競争の最前線、OpenAIがGPT-5.2を投入

OpenAIは2025年12月11日、最新のフロンティアモデルGPT-5.2を発表しました。これはGoogleとの激化する競争のさなかでリリースされ、開発者および日常的なプロフェッショナルユースを想定した、これまでで最も先進的なモデルと位置付けられています。GPT-5.2の投入は、GoogleのGemini 3がLMArenaのリーダーボードで優位に立つ中、OpenAIがリーダーシップを取り戻すための大きな一手と見られています。

GPT-5.2の三つのフレーバーとその特徴

GPT-5.2は、ChatGPTの有料ユーザーおよびAPI経由の開発者向けに以下の3つのバージョンで提供されます。

  • Instant (インスタント): 情報検索、執筆、翻訳などの日常的な問い合わせに特化した速度最適化モデル。
  • Thinking (シンキング): コーディング、長文分析、数学、計画立案など、複雑な構造化作業に優れた性能を発揮。
  • Pro (プロ): 最も難易度の高い問題に対し、最大限の精度と信頼性を提供する最上位モデル。

OpenAIのチーフプロダクトオフィサーであるフィジー・シモ氏は、GPT-5.2が「スプレッドシートの作成、プレゼンテーションの構築、コードの記述、画像の認識、長文の理解、ツールの使用、そして複雑な多段階プロジェクトの連携において、さらに優れた能力を発揮する」と説明しました。

「コードレッド」メモとOpenAIの戦略転換

今回のリリースは、CEOのサム・アルトマン氏が社内に「コードレッド」メモを発行したと報じられた直後の出来事です。このメモは、ChatGPTのトラフィック減少と、Googleへの市場シェア流出への懸念から、広告導入などのコミットメントを一時停止し、より良いChatGPT体験の提供に注力するよう優先順位の転換を促すものでした。GPT-5.2は、この「コードレッド」後のOpenAIによるリーダーシップ奪還に向けた重要な動きであり、コンシューマー向けの使用例への注力ではなく、エンタープライズ向けの機会を強化することを目的としているようです。

ベンチマークとGoogle Gemini 3との競争

OpenAIは、GPT-5.2がコーディング、数学、科学、視覚、長文推論、ツール使用の分野で新たなベンチマークスコアを樹立したと主張しています。特に、GPT-5.2 Thinkingは、OpenAI独自のベンチマークチャートにおいて、実世界のソフトウェアエンジニアリングタスク(SWE-Bench Pro)、博士レベルの科学知識(GPQA Diamond)、抽象的推論(ARC-AGIスイート)など、ほぼ全ての推論テストでGemini 3およびAnthropicのClaude Opus 4.5を上回っていると発表されています。

研究主任のエイダン・クラーク氏は、数学スコアの向上は単なる計算能力だけでなく、「モデルが多段階論理に従い、時間の経過とともに数値を一貫して保ち、時間の経過とともに複合する可能性のある微妙なエラーを回避できるかどうかの代理指標である」と強調しました。

コード生成とデバッグ、そして今後の課題

OpenAIのプロダクトリードであるマックス・シュワルツァー氏は、GPT-5.2が「コード生成とデバッグにおいて実質的な改善をもたらす」と述べ、複雑な数学と論理を段階的に処理できることを指摘しました。また、GPT-5.2 Thinkingの応答は、その前身よりもエラーが38%少ないため、日常の意思決定、研究、執筆においてより信頼性の高いモデルとなっています。

しかし、OpenAIは今後数年間で1.4兆ドルものAIインフラ構築にコミットしており、これらの「Thinking」や「Deep Research」モードは、標準のチャットボットよりもはるかに高価な計算コストを伴います。高コストモデルへの注力は、OpenAIにとって諸刃の剣となる可能性も指摘されています。

画像生成機能とGoogleの「Nano Banana」

今回の発表で特筆すべきは、新たな画像生成機能の欠如です。アルトマン氏の「コードレッド」メモでは、Googleの「Nano Banana」(Gemini 2.5 Flash Imageモデル)が8月のリリースで大きな話題を呼んだことを受け、画像生成が今後の主要な優先事項になると述べられていました。Googleは先月、さらに改良された「Nano Banana Pro」(Gemini 3 Pro Image)をリリースし、その優位性を示しています。OpenAIは、来年1月により良い画像生成、改善された速度、より良いパーソナリティを持つ新しいモデルをリリースする計画があるようですが、今回の発表では確認されませんでした。

結論:激化するAI市場でのOpenAIの行方

GPT-5.2は、OpenAIがこれまでのGPT-5とGPT-5.1の進歩を統合し、より信頼性の高い本番環境での利用を可能にするための強化モデルと言えます。Google Gemini 3との激しい競争の中で、OpenAIは企業向けへの注力と高精度モデルの開発に舵を切っています。巨額の投資と高い運用コストという課題を抱えながらも、OpenAIがAI市場のリーダーシップを維持できるか、その動向に注目が集まります。


元記事: https://techcrunch.com/2025/12/11/openai-fires-back-at-google-with-gpt-5-2-after-code-red-memo/