原子力スタートアップが再び脚光を浴びる
かつては懐疑的な目で見られがちだった原子力スタートアップが、今、劇的な転換期を迎えています。Last Energyの創設者兼CEOであるブレント・クーゲルマス氏が語るように、かつては原子力発電の重要性を説く必要がありましたが、現在では誰もが原子力発電を主要なソリューションの一部と見なしています。
Last Energyの革新的なマイクロ原子炉
Last Energyは、小型モジュール炉(SMR)の開発を進めています。これは、コスト削減のために大量生産が可能なコンパクトな原子力発電所です。同社の原子炉は、約15,000世帯に電力を供給できる20メガワットの電力を生成するように設計されています。
1億ドルの大型資金調達で勢い加速
Last Energyは、Astera Instituteが主導するシリーズCで1億ドル(約150億円)を調達しました。このラウンドには、AE Ventures、Galaxy Fund、Gigafund、JAM Fund、The Haskell Company、Ultranative、Woori Technologyなどが参加しています。
データセンターの電力需要が背景に
今回の資金調達は、急増するデータセンターの電力需要を背景に、多くの原子力スタートアップが資金を集めている流れに沿ったものです。例えば、Googleが出資するX-Energyは先月7億ドルを調達し、Antaresは2週間前に9,600万ドル、Aalo Atomicsは8月に1億ドルを調達しています。
「鋼鉄製格納」というユニークなアプローチ
Last Energyが競合他社と一線を画すのは、その設計アプローチです。同社は、数十年前に政府が開発した古い原子炉設計(世界初の原子力商船「NSサバンナ」向けに作られた加圧水型原子炉の初期設計)を現代に合わせて改良しています。最も革新的な点は、原子炉コアを1,000トンもの鋼鉄で永久に覆うという点です。
- メンテナンスフリー: 鋼鉄製格納容器は、原子炉の寿命期間中にサービスを受ける必要がありません。
- コスト効率: クーゲルマス氏によれば、核グレードのコンクリートよりも鋼鉄の方が費用対効果が高いとされています。
- 自己完結型燃料: 原子炉は6年分のウラン燃料を充填した状態で現場に届けられます。
- 簡素化された設計: 電気および制御接続を除けば、鋼鉄製の壁には他の開口部がありません。
- 統合された廃棄物処理: 原子炉の稼働期間が終了すると、鋼鉄製のチャンバーがそのまま廃棄物貯蔵容器として機能するため、別途の処分が不要になります。
経済性と将来の展望
このアプローチは、製造技術の進歩と相まって、原子力発電の価格を引き下げる可能性を秘めています。クーゲルマス氏は具体的な価格については言及を避けたものの、「数万基」といった大量生産のビジョンを語り、大幅なコスト削減の可能性を示唆しています。同社は来年、テキサスA&M大学からリースした敷地で5メガワットのパイロット原子炉の稼働を目指しており、20メガワットの商業規模ユニットは2028年に生産開始を予定しています。
