Mozillaの新たな船出:AI時代における信頼性
Mozillaの新CEOに就任したアンソニー・エンザー=デメオ氏が、FirefoxのAIを活用した未来と、同社が目指すウェブの信頼性について初めて語りました。
同氏が直面するのは、非営利団体としての使命と営利部門としての収益確保という、Mozillaが長年抱える複雑な立場です。特に、Googleが収益の大部分を占める中で、プライバシーとオープン性をいかに守り、AIの台頭する新たな技術環境で生き残るかが問われています。
エンザー=デメオ氏は、現在の「AIにおける信頼の浸食」を指摘し、この混乱の中にこそ、「人々が信頼できるテクノロジー企業」としてのMozillaの好機があると考えています。
FirefoxとAIモードの未来
Mozillaは、独自の巨大なLLM(大規模言語モデル)を開発する予定はありません。しかし、来年にはFirefoxに「AIモード」が導入される予定です。この機能は、ユーザーが好みのモデルを選択できる点が特徴で、オープンソースモデル、Mozillaがホストするプライベートクラウドオプション、そして大手企業のモデルも利用可能になるとのことです。
エンザー=デメオ氏は、Mozillaが特定のモデルを推奨するインセンティブを持たないため、「複数のモデルで市場に参入する」方針であることを強調。これにより、ユーザーはより公正な選択肢を持つことができると説明しています。
「最高のブラウザ構築」が最優先事項
エンザー=デメオ氏が過去1年間、Firefoxブラウザの開発チームを率いてきた経緯からも、彼にとってFirefoxがMozillaの生命線であることは明白です。彼は、「Mozillaの最優先事項は、依然として最高のブラウザを構築することだ」と述べ、これが同社の中心事業であると断言しました。
実際、Firefoxはモバイル分野で着実に成長しており、毎月2億人のユーザーが利用しているとのことです。同氏は、AIの進化がブラウザ市場に新たな競争をもたらすと見ており、Firefoxがこの波に乗ることで、Google Chromeが圧倒的なシェアを占める市場での存在感を再び高められると期待しています。
今後は、Mozilla VPNのような新製品もFirefoxと連携して提供される予定であり、ブラウザを中心に据えた戦略が強化されます。
新たな収益源とオープンウェブの維持
エンザー=デメオ氏は、「Googleからの収益の多様化が必要だ」としながらも、必ずしもブラウザから離れる必要はないと考えています。サブスクリプション、広告、そして検索やAIの配置契約を組み合わせることで、新たな収益モデルを確立する可能性を示唆しました。
また、Firefoxに内蔵されるVPNやプライバシーサービス「Monitor」を通じて、ユーザーが課金するモデルも視野に入れています。広告ブロッカーのブロックによって1億5000万ドルの収益増が見込めるとしながらも、これは「ミッションに反する」として否定的な見解を示しました。
最終的にMozillaが提供したいのは、「データが常にユーザーの管理下にある」という信頼感です。エンザー=デメオ氏は、この信頼性が市場で求められているものであり、Mozillaの最大の強みであると語っています。
元記事: https://www.theverge.com/tech/845216/mozilla-ceo-anthony-enzor-demeo
