2025年:テレビ「輝度競争」終焉の始まりか?進化するディスプレイ技術の行方

HDRが引き起こした「輝度競争」とその加速

オーディオ業界の「ラウドネス・ウォー」に似た「輝度競争」が、テレビ業界で過去数年間にわたり繰り広げられてきました。HDR(ハイダイナミックレンジ)の登場とその高い輝度マスタリングレベルがこの競争の火付け役となり、各ブランドは必要な光出力を達成するためにディスプレイ技術の限界を押し上げてきました。HDRが消費者市場に導入されてから10周年を迎える2025年は、この「誰がより明るいか」という競争が新たな頂点に達した年となりました。

この年、TCLとHisenseは初の5,000nitテレビ(特定の条件下ですが)を発表し、かつて2,000nit達成に苦慮していたテレビが、その2倍以上の輝度を実現するまでになりました。この動きは、輝度競争が最終局面へと向かう前触れとなるかもしれません。

新たな技術革新:OLEDとMini-LEDの進化

2025年のテレビ技術における最大の成果の一つは、LG Displayによる「Primary RGB Tandem」OLEDパネルの登場でした。LG G5、Panasonic Z95B、Philips OLED950/OLED910といったモデルに採用されたこの技術は、従来の3層構造(青色の層が黄色の層を挟む)から、赤・青・緑・青の4層構造へとOLEDパネルの構成を大きく変更しました。これにより、OLEDパネルの潜在的な光出力が最大4,000nitに達し、色純度も大幅に向上しました。

一方、TCLやHisenseといった企業もMini-LEDディスプレイの能力を飛躍的に向上させました。これには、バックライト制御の改善が含まれ、LEDテレビの最大の弱点である光のハロー(ブルーミング)を軽減し、黒レベル性能をOLEDに近づけています。両社はローカルディミング機能を拡大し、TCLはバックライトとスクリーンの間の光学距離を短縮することでブルーミングをさらに最小限に抑えました。

RGB Mini-LEDの登場と高価格化

2025年には、新たなテレビ技術としてRGB Mini-LEDが消費者市場に導入されました。従来のMini-LEDが白色または青色LEDと量子ドットやカラーフィルターを用いていたのに対し、Hisenseは個々の小型赤・緑・青LEDバックライトを使用するRGB Mini-LEDを、TCLも同様の「Q10M」を発表しました。Samsungもさらに小型化した「micro-RGB」という独自のバージョンを披露しており、Sonyも2026年春のデビューに向けてRGB TV技術を開発していることが確認されています。

このRGB技術の可能性は非常に大きいものの、その製造上の課題と必要な処理能力のため、価格は12,000ドルから30,000ドルと非常に高価です。しかし、この技術が将来的に、より手に届きやすいサイズで提供されることが期待されます。

終わりなき輝度追求の是非

このような技術革新に伴い、さらなる高輝度化の可能性が生まれています。これは日当たりの良いリビングルームで外光に対抗するのに役立つ一方で、暗い環境ではまぶしさを感じる原因にもなり得ます。5,000nitのMini-LEDテレビが存在し、理論的には最高の4,000nitでマスタリングされたHDRコンテンツを表示できる今、これ以上の輝度を追求する必要があるのでしょうか?

OLEDはまだ輝度においてMini-LEDに劣るため、引き続き改善が見込まれます。しかし、Mini-LEDメーカーが単に「最も明るい」という能力のために輝度を追求するのであれば、より良いリソースの使い方は、優れた画像処理と黒レベル性能の向上に焦点を当てることでしょう。

オーディオの「ラウドネス・ウォー」がダイナミックレンジを損なったように、単に明るさのための明るさは、耳に厳しい高度に圧縮されたオーディオトラックと同じく、目に厳しいものです。テレビがどれだけ明るくなれるかではなく、その輝度をどれだけ上手に活用し、魅力的で感動的な映像を作り出せるかが、最終的な評価基準となるでしょう。


元記事: https://www.theverge.com/tech/841054/tv-brightness-hdr-2025