はじめに:iRobotの「再起動」
ルンバで知られるロボット掃除機メーカーのiRobotが破産申請を行ったことは、市場にとって驚きではありませんでした。しかし、同社のゲイリー・コーエンCEOはこれを「終わり」ではなく「再起動」と位置づけています。彼の見解では、この破産手続きはiRobotが生き残り、成長するための新たな章の始まりであり、中国の製造委託先であるPicea Roboticsに買収されることで実現します。
CEOが語る再建の道
コーエンCEOは、今年初めに前CEOのコリン・アングル氏の後任として就任し、会社を立て直す任務を負いました。彼は今回の破産申請をポジティブに捉え、「これは我々にとって良いニュースだ。長期的に会社を存続させる」「500人の従業員の雇用を守り、ボストンを拠点とするグローバルブランドを存続させる」と述べました。また、本社を長期リースし、エンジニア、研究開発、ソフトウェア開発の拠点を維持すると強調し、「iRobotは存続する。混乱はないと予想している」と、顧客への安心感をアピールしました。
Picea Roboticsとの新たな関係
iRobotは、来月にも完了する可能性のある事前調整型の破産手続きの一環として、主要な契約製造業者であり、最近主要債権者となった中国のPicea Roboticsに買収されます。これにより、iRobotはこれまで通り事業を継続しますが、Piceaの完全子会社となります。Picea Roboticsは、Amazonによる買収交渉が破談になった直後からiRobotの主要な契約製造業者となり、コーエンCEOは、同社がiRobotを消費者中心のブランドへと転換させる上で貢献したと評価しています。
製品戦略の転換と技術革新
Piceaとの協力により、iRobotは今年3月に過去最大となる8種類の新製品を発売しました。コーエンCEOは、「Lidarナビゲーションや複合モップ製品など、消費者が本当に望んでいたものを提供できた」と述べ、Piceaとの協業によって「4年間の技術ギャップを1年で埋めることができた」と強調しています。初期の製品は他の中国製中価格帯ブランドに似ているとの声もありましたが、自動ゴミ収集機能を不要にするダスト圧縮ビンや、新しいローラーモップのリトラクタブルカバーなど、革新的な機能も導入されています。これらの機能の多くはPiceaによって開発されたもので、コーエンCEOはこれを「パートナーシップ」と表現しています。
社内文化と過去の課題
コーエンCEOは、再建の鍵は「スピード」にあると指摘しています。従来の「技術優先」から「消費者主導」の文化への転換を目指しており、これは中国の競合他社のような迅速な対応を可能にします。また、Amazonによる買収交渉が長引いたことでイノベーションが停滞したことや、複合型製品や多機能ドックへの対応が遅れたことなど、過去の課題も認めました。特に、vSLAMナビゲーションに固執したことが最大の課題だったとし、Lidarへの移行を即座に決定しました。前CEOのコリン・アングル氏がカメラベースの技術を重視していたことについては、「彼のビジョンを市場で実行に移すことができなかった」と語っています。
iRobotの未来像
コーエンCEOは、自身の役割として、iRobotの文化を技術優先から消費者主導へと転換させ、豊富なアイデアを商業化することを目指しています。彼は「新製品のアイデアの宝庫は本当に素晴らしいものだった。コリンが考えなかったことは一つもない」と述べ、ルンバ以外の製品、例えば「Terraロボット芝刈り機」のような製品が再び日の目を見る可能性も示唆しました。
5年後のビジョンについて尋ねられると、コーエンCEOは「一歩ずつ進む必要がある」としつつも、「ロボット掃除機(RVC)を超えて成長する意欲と能力がある」と語りました。彼は家庭内だけでなく「家の外」も新たな市場として見据えており、アメリカのロボット技術の革新性と中国の効率性が融合すれば、iRobotの再興は不可能ではないと締めくくりました。
元記事: https://www.theverge.com/report/847340/irobot-bankruptcy-reset-interview-ceo-gary-cohen
