ポートランド大規模抗議デモ「カエルの行進」:連邦政府の介入と市民の抵抗

はじめに:ポートランドの大規模抗議デモ「カエルの行進」

2025年10月19日、米オレゴン州ポートランドで、数週間にわたる反ICE(移民税関執行局)活動とトランプ政権への反発が結集し、大規模な「ノー・キングス(No Kings)」抗議デモが開催されました。市中心部のウォーターフロント公園は、数万人の参加者で埋め尽くされ、その光景はまさに圧巻でした。特に目を引いたのは、膨らませるカエルのコスチュームを身につけた大勢の参加者たちで、このデモの新たな象徴となっていました。

「アンティファ」指定と連邦政府の介入

この抗議活動の背景には、ドナルド・トランプ大統領が、いわゆる「アンティファ」を国内テロ組織に指定するという大統領令に署名したことがあります。この指定は、実際には存在しないとされていますが、大統領令に続き、国家安全保障大統領覚書が発令され、閣僚に対し、アンティファとその資金提供者を「力ずくで追跡し、訴追する」よう指示されました。さらに、大統領は「戦争で荒廃したポートランド」に州兵を派遣し、ICEをアンティファから「保護する」と命令。これにより、ポートランドは闘争の中心地の一つと化しました。

抗議の象徴:カエルと市民の声

6月の抗議デモではアメリカ国旗や「×印の王冠」が主流でしたが、10月のデモではカエルが主役となりました。膨らませるカエルのコスチュームは、緑色のものが多かったものの、ピンクやハロウィン仕様のスケルトンカエルなど多種多様でした。他にもユニコーン、サメ、恐竜など様々なインフレータブルが参加しましたが、カエルはあらゆる形で遍在していました。これは、連邦政府の強硬な姿勢に対し、不条理さで対抗するというポートランドならではの抵抗の表現でした。

参加者からは、「政権は我々全員がアンティファに雇われていると考えているが、まだアンティファからの小切手は届いていない」といった皮肉を込めた声が聞かれ、連邦政府の主張に対する市民の不信感と抵抗が浮き彫りになりました。

現場の状況:連邦法執行機関との対峙

デモの現場では、連邦法執行機関と市民との緊張関係が垣間見えました。ICE施設では、迷彩服、ボディアーマー、ヘルメット、マスクで武装した連邦捜査官が建物の屋上に配置され、約500人の群衆を見下ろしていました。連邦捜査官はペッパーボールを使用し、その煙や催涙スプレーの残滓が残る中、多くの参加者がガスマスクや呼吸器を着用していました。

しかし、抗議者たちは「ジャンプしろ!」と屋上の連邦捜査官に叫び、ブリトニー・スピアーズのEDMミックスに合わせて踊るなど、ユーモアと抵抗の精神を失いませんでした。地元の警察官は群衆の中を自転車で通り過ぎるなど、比較的穏やかな対応を見せる一方で、抗議の目は一貫してICEに向けられていました。

結び:民主主義と抵抗の表現

ポートランドの「カエルの行進」は、連邦政府による「アンティファ」指定と強硬な介入に対し、市民が創造的かつ平和的な方法で抵抗する姿を示しました。このデモは、民主主義とは何か、そして市民がどのようにしてその声を上げ、権力に異議を唱えるかを示す象徴的な出来事となりました。


元記事: https://www.theverge.com/policy/802315/portland-no-kings-october-ice-protests-frog-antifa