概要
YC出身のスタートアップであるCercliが、AIを搭載したMENA(中東・北アフリカ)地域向けのHRプラットフォームとして、1,200万ドルのシリーズA資金調達を完了しました。この資金調達は、欧州のVCであるPicus Capitalが主導し、過剰応募となりました。Cercliは、MENA地域で長らく課題となっていた断片化した企業システム、時代遅れのコンプライアンスツール、そして人事と財務が連携しないHRソフトウェアといった問題に対し、AIを核とした統合的な代替ソリューションを提供することを目指しています。
Cercliの進化とAIへの注力
昨年400万ドルのシードラウンドを調達して以来、Cercliはその姿を大きく変えました。同社は、RipplingのようなスタックをMENA地域向けに再構築し、最初からAIネイティブな設計を採用しています。この1年間で、Cercliは収益を10倍以上に拡大し、現在では50カ国にわたる複数の企業で年間1億ドル以上の給与処理を行っています。
CEOのAkeed Azmi氏は、混雑するHRテック市場において、AIファーストの再構築が同社を差別化する鍵であると強調しています。Azmi氏によると、同社は過去3ヶ月間で、給与計算エンジンを複数国対応かつエージェント互換性のあるものに書き換え、グローバルな管轄区域全体でより効率的にスケールできるようにしました。「過去20年間のレガシーシステム、例えばSAP、Oracle、Workdayなどは、オンプレミスとクラウドのために構築されました。しかし、私たちは今、AIネイティブな世界に突入しています」とAzmi氏は述べ、「私たちは単にAIを統合するだけでなく、人々とエージェントが協力して働くためのスタック全体を再考したかったのです」と付け加えました。
採用モジュールも同様にAI主導型に刷新され、候補者リストの抽出、社内データからのソーシング、採用適合性に関するバックグラウンドロジックの実行などが可能になりました。Cercli自身の社内業務もAIによって運営されており、カスタム構築された財務および調整エージェントを使用して、財務と会計を管理しています。
競合との差別化と市場のニーズ
Deel、Remote、BambooHRといった多数のマルチモジュールHR競合が存在する中で、Cercliは統合とAIネイティブなアーキテクチャに強みを見出しています。MENA地域の企業は、経費管理、給与計算、採用などに異なるポイントソリューションを組み合わせて利用していることが多く、顧客は「すべてを一つの場所で」提供することを求めています。Azmi氏は、AIネイティブなアーキテクチャにより、顧客のオンボーディングが2〜3日で完了すると主張しており、これはレガシーシステムで数ヶ月かかることと比較して大幅な短縮です。この迅速な対応が、Vision Bank、Global Climate Finance Centre、Huspy、Lean Technologies、Ziinaといったスタートアップから多国籍企業まで、幅広い顧客を獲得する要因となっています。
投資と今後の展望
今回の投資は、Picus CapitalにとってMENA地域への初の投資となります。同社はこれまでにもPersonio、Multiplier、Deel、Maki、JetHRといったグローバルなHR企業に投資してきました。今回のシリーズAラウンドには、Knollwood Investment Advisory、既存投資家のY Combinator、Afore Capital、COTU Venturesも参加しています。
Cercliは、この資金を活用して新たなAIネイティブ製品を開発し、MENA地域の58億ドル規模のHRソフトウェア市場でのシェア拡大を目指します。Picus Capitalの創設パートナーであるRobin Godenrath氏は、「私たちは、このビジネスモデルがポートフォリオ内でグローバルに成功するのを見てきました。Cercliが新規顧客獲得と製品ローンチを通じて市場シェアを拡大し続けることを支援できることを楽しみにしています」とコメントしています。