インドのフィンテック大手Pine Labs、IPOで評価額を下方修正
インドのマーチャントコマーススタートアップであるPine Labsは、今週IPOを実施するにあたり、前回の資金調達ラウンドから約40%低い評価額で上場することになりました。2022年には50億ドル以上と評価されていた同社の評価額は、IPO価格帯の上限で約29億ドル(約2,540億ルピー)に設定されています。これは、PayPalやMastercardなどの大手企業が支援する同社にとって、市場の現実を反映した動きと言えるでしょう。
株式公開の詳細と投資家の動向
Pine Labsは、当初の計画から株式公開の規模を縮小しました。新規発行株式は20%減の208億ルピー(約2億3,400万ドル)に、売出株式は44%減の8,230万株となりました。既存投資家であるPeak XV Partners、Temasek Holdings、PayPal、Mastercardも一部株式を売却しますが、Amrish Rau CEOは、投資家がより多くの株式を保有し続けることを選択した結果、売出株式が減少したと説明しています。Rau氏は、IPOの価格設定において「信頼を維持し、皆の支持を得たい」と述べ、成功には「村全体が協力する必要がある」と強調しました。
事業の進化とセキュアなデジタルインフラ
1998年創業のPine Labsは、当初はPOS端末の導入に注力していましたが、その後、決済受容を超えて事業を拡大してきました。現在では、Amazon PayやCREDを通じた請求書支払い、アカウントアグリゲーターベースの取引、そして幅広い決済、取引、アクワイアリングサービスを提供しています。同社の収益の約70%は、セキュアなデジタルインフラと取引サービスから生み出されており、残りの30%は発行およびアクワイアリング事業によるものです。この堅牢なフィンテックプラットフォームが、同社のグローバル展開の基盤となっています。
グローバル展開への野心と市場での存在感
Pine Labsは、インド国外での顧客獲得にも成功しており、IPO後も国際的なプレゼンスを拡大する方針です。これは、インド政府が推進するグローバル競争力のあるフィンテック提供の動きとも合致しています。同社はすでにマレーシア、シンガポール、オーストラリア、アフリカ、UAE、米国を含む20カ国で事業を展開しており、2023年から2025会計年度にかけて国際市場からの収益は約58%増加しました。Rau CEOは、「インドでフィンテックに関して成し遂げたことは、他のどの国もこれに近いことはできていない」と述べ、「我々が開発したIP知識と技術スタックをグローバルに展開する機会がある」と自信を示しています。現在、98万以上の加盟店、716の消費者ブランド、177の金融機関にサービスを提供し、累計60億件以上の取引、総額11.4兆ルピー(約1,280億ドル)を処理しています。
財務実績と今後の展望
Pine Labsは、6月期に4,786万ルピー(約54万ドル)の純利益を計上し、前年同期の損失から黒字転換を果たしました。営業収益は前年同期比17.9%増の61.6億ルピー(約6,900万ドル)でした。海外事業は総収益の約15%を占め、9億4,325万ルピー(約1,100万ドル)に達しています。インド国内では、Razorpay、Paytm、Walmart傘下のPhonePeといった競合他社と激しい競争を繰り広げています。同社のIPOは、Groww、Lenskart、Shadowfax、Meesho、BoAtなど、今年上場を予定しているインドのテクノロジー企業の波の一部を形成しています。
