「Unfair Flips」とは?:運が支配するゲーム
最近、スピードランコミュニティで異色のゲーム「Unfair Flips」が注目を集めています。このゲームは、コインを投げて10回連続で表を出すというシンプルな目標を掲げています。初期の表が出る確率は20%から始まり、最大で60%まで上げることができます。開発者は、このゲームが純粋な「運」に支配されることを意図していました。
運を「攻略」するスピードランナーたち
「Unfair Flips」は、そのランダム性にもかかわらず、熱心なスピードランコミュニティを形成しています。現在の世界記録は、ravspect氏による2分52秒、96回のフリップです。理論上は、ゲーム開始直後に10回連続で表を出し、約20秒でクリアすることも可能ですが、その確率は2000万分の1以下とされています。
プレイヤーは、より価値のあるコイン、コンボ倍率、フリップ時間の短縮、表の確率向上といったアップグレードを戦略的に購入することで、運の要素を少しでも有利に進めようとします。Discordコミュニティでは、これらのアップグレード戦略に関する活発な議論が交わされています。
乱数生成器の「解読」とゲームの「抜け穴」
「Unfair Flips」は運任せのゲームとして設計されていますが、スピードランナーたちはそのランダム性を「攻略」するための様々な手法を発見しています。これは、ゲームの内部メカニズムにおける「セキュリティ」とも言えるランダム性に対する、プレイヤーによる「ハッキング」と見なすことができます。
- 乱数生成器(RNG)のシード解読:プレイヤーのFour氏は、20時間を費やして乱数生成器のシードを解読し、10回連続で表が出るシードを特定しました。これにより、理論上は完璧なランを強制的に作り出すことが可能になります。これは、ゲームの予測不可能な要素を外部から操作する、高度な技術的介入と言えます。
- タイミングの最適化:ゲーム内のキャラクターの動作を監視し、フリップのタイミングを計ることで、わずかながら有利な状況を作り出そうとする試みも存在します。
- マルチインスタンスによるリセット:「マルチインスタンス」という手法も開発されました。これは、複数のゲームインスタンスを同時に開き、表が出なかった場合に元のインスタンスのセーブデータをリセットして再試行するというものです。ゲームの意図しない挙動を利用して、試行回数を実質的に増やすこの方法は、ゲームの設計上の「抜け穴」を突いたものと言えるでしょう。
開発者のHeather Flowers氏は、スピードランがこれほど盛り上がるとは予想していなかったと語っています。
開発者の驚きとコミュニティの熱狂
Flowers氏は、「Unfair Flips」が「人間と確率の関係性を直接的に問いかける」ゲームであると述べています。スピードランナーたちは、この「馬鹿げた」ゲームをスピードランすること自体を楽しんでおり、「コイン投げのスピードランは非常に馬鹿げているが、馬鹿げたことがなければ人生は非常に退屈になる」と語るプレイヤーもいます。
「All Endings」カテゴリでは、enbyzee氏が7時間かけて全エンディングを達成し、その過程で2万回以上スペースバーを押したと語っています。コミュニティは「Flippin’ Fridays」で交流し、新規ランナーも歓迎しており、このゲームが「難しいトリックや複雑なルーティングを覚える必要がない、非常にアクセスしやすいスピードラン」であると評価されています。
まとめ:運と戦略、そして「ハッキング」の境界線
「Unfair Flips」のスピードランは、一見すると純粋な運任せのゲームが、プレイヤーの創意工夫とシステム解読によっていかに変貌するかを示す興味深い事例です。乱数生成器のシード解読やマルチインスタンスといった手法は、ゲームの「セキュリティ」とも言えるランダム性をプレイヤーがどのように「ハッキング」し、最適化していくかを示唆しており、ゲームデザインにおける予測不可能性とプレイヤーの探求心の境界線を浮き彫りにしています。
元記事: https://www.theverge.com/games/814111/unfair-flips-speedrunning
