フォードのEV戦略に転換点か
米自動車大手フォードの幹部が、同社の主力電気自動車(EV)ピックアップトラックである「F-150ライトニング」の生産中止を検討していると、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じました。この議論は、フォードが10月下旬にF-150ライトニングの生産を一時停止し、ハイブリッド車およびガソリンエンジン車の生産を優先するという決定を下した直後に行われています。
この動きは、EV市場の動向とフォードの将来の戦略に大きな影響を与える可能性があり、自動車業界全体におけるEVシフトのペースと方向性について重要な示唆を与えるものと見られています。
生産上の課題と市場の逆風
F-150ライトニングの生産停止の背景には、今年初めにアルミニウム供給業者ノベリスの工場で発生した火災による生産上の問題が挙げられています。F-150ライトニングは2021年に発表され、2022年から販売が開始されましたが、当初のベース価格4万ドルよりも高価になることが多く、販売面では苦戦を強いられてきました。
米国でトップクラスの販売台数を誇るEVトラックであるにもかかわらず、四半期ごとの販売台数は数千台にとどまっており、フォードは販売目標の達成に苦慮している状況です。
EV市場の厳しい現実
EVトラック市場は、連邦EV税額控除の終了や、トランプ政権による排出ガス規制の緩和など、政治的・経済的な逆風に直面しています。これらの要因が、EVの普及を奨励する環境を厳しくし、フォードのような自動車メーカーのEV戦略に再考を促している形です。
今回のフォードの検討は、EV市場が依然として多くの課題を抱えていることを浮き彫りにし、自動車メーカーがEVへの大規模な投資を継続する上でのリスクと不確実性を示唆しています。これは、サプライチェーンの安定性や政府の政策が、企業の戦略的決定にどれほど大きな影響を与えるかを示す事例とも言えるでしょう。
元記事: https://techcrunch.com/2025/11/06/ford-execs-reportedly-discuss-ending-the-f-150-lightning/
