炭素クレジット市場に統合の波:Carbon DirectがPachamaを買収、市場の信頼性への影響は?

炭素クレジット市場の再編:Carbon DirectがPachamaを買収

炭素管理スタートアップのCarbon Directが、同業のPachamaを買収すると発表しました。この動きは、自主的炭素クレジット市場が直面している不確実性と信頼性の課題を浮き彫りにしています。Pachamaは今年夏に約20名の従業員を解雇しており、市場の軟化が背景にあるとされています。

PachamaはAmazonのClimate Pledge、Breakthrough Energy Ventures、Lowercarbon Capital、そしてエレン・デジェネレス、ローラ・ダーン、セレナ・ウィリアムズといった著名なエンジェル投資家から8,800万ドルもの投資を集めていました。一方、Carbon Directは6,080万ドルを調達しています。買収条件は開示されていません。

市場軟化の背景と企業の動向

PachamaのCEOであるDiego Saez Gil氏は、レイオフ発生時に「現在の不確実で不安定な金融、経済、地政学的な状況に加え、米国における反ESG(環境・社会・ガバナンス)の動きが、企業のサステナビリティ予算に影響を与えている」と述べています。特に自主的炭素市場は「すでに調整局面にあった」とのことです。

Pachamaは森林の回復や保全を通じて炭素クレジットを創出する自然ベースの炭素クレジットに注力していました。対照的に、Carbon Directは炭素市場のアドバイザリーおよび会計事務所として、企業の炭素排出量追跡・報告を支援し、オフセットのための炭素クレジットの審査を行っています。

炭素クレジット市場の信頼性問題とセキュリティ上の懸念

近年、炭素市場は大きな不確実性に揺さぶられており、その原因は政治的な変動だけではありません。自主的炭素市場は、その約束を果たせていないという批判に直面しています。例えば、The Guardian紙による大規模な調査では、ある検証機関のクレジットの90%以上が、実際には炭素削減に繋がっていなかったことが判明しました。

特に自然ベースの炭素クレジットにおける大きな課題の一つは、購入によって保護された森林が、そもそも破壊の脅威にさらされていたのかという「追加性」の疑問です。大企業はESGに関する広報活動を控えめにしているものの、多くは依然としてネットゼロ目標の達成に関心を持っています。

Carbon Directは、Microsoft、Shopify、American Express、JP Morgan、Alaska Airlines、BlackRockといった大手企業を顧客に抱えており、今回の統合が市場の透明性と信頼性の向上に寄与するかが注目されます。


元記事: https://techcrunch.com/2025/11/10/consolidation-begins-to-hit-the-carbon-credit-market/