Hero、AIプロンプト自動補完SDKを発表:生産性向上と潜在的なセキュリティ課題

HeroがAIプロンプト自動補完SDKを発表

生産性向上アプリを提供するHeroが、AIプロンプトの自動補完を可能にする新しいSDKを発表しました。AIチャットボット向けの完璧なプロンプトを作成することは、しばしば大きな課題であり、専門の「プロンプトエンジニア」という職種が生まれるほどです。Heroのこの新SDKは、コンテキストに基づいてプロンプトを自動的に補完することで、この課題を解決することを目指しています。

このSDKは現在招待制で提供されており、開発者はこの技術を自身のアプリケーションに統合できるようになります。

SDKの仕組みとメリット

Heroの自動補完SDKは、ユーザーがプロンプトを入力する際に、そのコンテキストから次に必要となる情報を予測し、自動的にフィールドを補完します。例えば、「フライトを予約」と入力すると、SDKは「目的地」、「出発地」、「日付」、「時間」、「航空会社」、「復路」といったフィールドを自動的に表示します。ユーザーは途中で入力を停止し、補完されたクエリをチャットボットに送信できます。

この機能の主なメリットは以下の通りです。

  • 迅速なタスク完了: AIとのやり取りの回数を減らし、アクションを10倍速く完了させることが可能になります。
  • 効率的なプロンプト生成: AI画像生成や動画生成ツールにおいても、オブジェクト、スタイル、場所、カメラアングルなどのパラメータを自動補完し、より詳細なプロンプト作成を支援します。
  • コスト削減: 企業にとっては、AIとのメッセージ交換が減ることで、サーバーコストの削減にも繋がる可能性があります。

AdobeのFireflyアプリにおけるサウンドトラック作成機能も、ムード、スタイル、目的などのキーワード入力でプロンプト生成を容易にする同様のアプローチを採用しています。

広がる応用範囲と市場への影響

Heroの共同創設者であるブラッド・コワルク氏によると、このAI自動補完機能は、旅行、Eコマース、広告、顧客サポートなど、幅広い分野で新たなユースケースを切り開く可能性を秘めています。同氏は、MetaでのAR機能開発経験から、画面サイズに制約のあるARグラスのような環境では、シンプルなプロンプトインターフェースが重要であるという着想を得たとのことです。

Heroは、自社のアプリ内で会議や友人との待ち合わせ時間を調整する機能にこの技術を試験的に導入しており、数ヶ月以内にユーザーに公開する予定です。また、広告技術スタートアップのKoah Labsと提携し、自動補完候補にブランドを表示するAIパワード広告の開発も進めています。

セキュリティとプライバシーに関する考察

AIによるプロンプト自動補完技術は、生産性を飛躍的に向上させる一方で、セキュリティとプライバシーに関する新たな課題も提起します。SDKがユーザーのコンテキストに基づいて情報を補完するという性質上、どのようなデータが収集され、どのように処理・保存されるのかが重要になります。個人情報や機密データが不適切に扱われるリスクがないか、また、自動補完機能が悪意のあるプロンプトインジェクション攻撃に利用される可能性がないかなど、堅牢なセキュリティ対策と透明性の高いデータポリシーが求められます。

開発者は、この強力なツールを導入するにあたり、ユーザーデータの保護とシステムの安全性を最優先に考慮する必要があります。

資金調達と今後の展望

Heroは昨年、シードラウンドで400万ドルを調達しており、さらにForerunner Ventures主導で300万ドルの追加資金を確保しました。コワルク氏は、アプリとSDKの成長に応じて、今後数ヶ月以内にさらなる大規模な資金調達ラウンドを計画していると述べています。

この技術が広く普及することで、AIとのインタラクションのあり方が大きく変わる可能性があり、その動向が注目されます。


元記事: https://techcrunch.com/2025/11/12/productivity-app-hero-announces-an-sdk-that-will-complete-your-ai-prompts-for-you/