サム・アルトマン支援のExowatt、AIデータセンターの電力危機を「熱い岩」で解決へ

AIデータセンターの電力需要とExowattの挑戦

AIの急速な発展に伴い、データセンターの電力消費は爆発的に増加しており、新たな電力危機が懸念されています。この課題に対し、サム・アルトマン氏が支援するExowatt社は、革新的な太陽熱発電技術で解決を目指しています。同社の共同創業者兼CEOであるハナン・ハッピ氏は、「1kWhあたり1セント」という目標を掲げ、24時間365日稼働する安価な電力供給の実現に注力しています。

「熱い岩」技術の仕組み

Exowattの核となる技術は、長年研究されてきた集中型太陽熱発電(CSP)を再構築したものです。これは、太陽エネルギーを利用して熱を蓄える材料を加熱する方式で、特に熱を長時間保持できる材料は「熱い岩」として知られています。同社のP3ユニットは、輸送用コンテナサイズのシンプルな箱で、上部には太陽光を集束させるレンズが設置されています。集束された太陽光は内部の特殊なレンガを加熱し、ファンがその熱をスターリングエンジン(熱を機械エネルギーに変換するピストン式装置)と発電機に送ります。このシステムは最大5日間熱を保持できるため、太陽が出ていない時間帯でも安定した電力供給が可能です。

資金調達と規模拡大への展望

Exowattは、この野心的な目標達成のため、シリーズAラウンドの延長で追加の5,000万ドルを調達しました。これにより、総調達額は7,000万ドルに達しています。MVP Venturesと8090 Industriesが主導し、Andreessen Horowitzやサム・アルトマン氏も以前からの投資家として参加しています。ハッピ氏によると、ExowattのP3ユニットの受注残は現在約1,000万台、90ギガワット時の容量に相当し、「最終的には数百万、そして数十億ユニットへの規模拡大」を目指しています。年間100万ユニットの生産に達すれば、1kWhあたり1セントの目標を達成できる見込みです。

既存技術との比較と今後の課題

太陽熱発電は数十年前から存在する技術ですが、これまで太陽光発電(PV)やリチウムイオンバッテリーにコスト面で太刀打ちできないことが課題でした。しかし、ハッピ氏は、P3ユニットの小型化とモジュール式システム、そして製造規模の拡大による学習曲線効果が、Exowattを差別化すると主張しています。ただし、この技術は日照量の多い地域で最も効果を発揮するため、設置場所が限定される可能性や、データセンターに必要なP3ユニットの数が膨大になることで広大な土地が必要になるという課題も指摘されています。それでも、ハッピ氏は、Exowattの強みが活かせる地域と新たなデータセンター建設地には「高い重複がある」と述べています。

データセンターのエネルギーセキュリティへの貢献

AIデータセンターの安定稼働には、途切れることのない信頼性の高い電力供給が不可欠です。Exowattの技術は、24時間365日のベースロード電源として機能し、データセンターのエネルギーセキュリティを大幅に向上させる可能性を秘めています。安価で持続可能な電力は、AIインフラの運用コストを削減し、将来的なAI技術の普及と発展を支える基盤となるでしょう。これは、単なるコスト削減だけでなく、国家レベルでのデジタルインフラの安定性確保という、セキュリティ上も極めて重要な意味を持ちます。


元記事: https://techcrunch.com/2025/11/13/sam-atlman-backed-exowatt-wants-to-power-ai-data-centers-with-billions-of-hot-rocks/