COP30:期待と現実
ブラジルのベレンで11月20日から開催された第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)は、数年ぶりに最も重要な国際気候変動交渉になると期待されていました。特に2015年のパリ協定以来、最も大きな成果を出す可能性があると目されていましたが、その期待は薄れる形で終わりを迎えました。
「実施のCOP」と銘打たれた今回の会議は、地球温暖化を食い止め、よりクリーンなエネルギーへの転換を実現するためのこれまでの約束をいかに実行に移すかに焦点を当てるはずでした。しかし、開催地選定から運営に至るまで、いくつかの問題が浮上しました。
会議の開催地がアマゾンへの玄関口であるベレンに設定されたのは、アマゾンが気候変動対策において果たす重要な役割を強調するためでしたが、実際には5万人の参加者を受け入れるために森林がブルドーザーで切り開かれ、一時的な宿泊施設としてディーゼル燃料を使う大型クルーズ船が導入されるなど、環境への配慮と矛盾する事態が発生しました。さらに、閉幕前日には会場で火災が発生し、交渉が一時中断されるという予期せぬ出来事も発生しました。
交渉の難航と対立
2週間にわたる交渉は、気候変動の主要な原因である化石燃料からの移行について、具体的な合意に至ることなく「先送り」の約束に終始しました。会議は、世界中で内向きな国家主義的感情が高まり、気候変動のような地球規模の問題における国際協力が脅かされる中で行われました。
開催地の矛盾に抗議するため、先住民のデモ参加者たちは、森林保護と資源採掘・森林伐採の停止を求め、会場への立ち入りを阻止する行動を取りました。今回のCOPでは先住民の参加者数が過去最多を記録しましたが、化石燃料ロビイストの数もブラジル代表団を除く全参加国の代表団数を上回るという異例の事態となりました。
米国連邦政府が交渉を欠席したことも、他の産油国・ガス生産国の圧力緩和につながり、化石燃料からの脱却に向けたロードマップ作成の遅延に貢献したと見られています。
限定的な成果と残された課題
会議は土曜日に閉幕しましたが、化石燃料からの移行や森林破壊の停止に向けた「ロードマップ」を正式なものにするという二つの主要な取り組みは立ち消えとなりました。最終的な合意文書には、化石燃料や森林破壊への言及すら含まれていません。COP30議長のアンドレ・コレア・ド・ラゴは、来年に向けてこれらのロードマップの作成に引き続き取り組むことを約束しました。
その他の進展としては、ブラジルが10の新たな先住民領土を承認したこと、森林保護と気候変動適応プロジェクトに数十億ドルの追加資金が約束されたことなどがあります。また、カーボンフリーエネルギーの導入をより公平にし、人権を尊重することを目的とした「公正な移行作業プログラム」が合意されました。しかし、米国気候行動ネットワークのイフェ・キリマンジャロ事務局長は、「公正な移行作業プログラムに関する規定が強化されたことは歓迎するが、最終文書に化石燃料への言及が完全に欠落していることは極めて残念だ」と述べ、「気候危機の根本原因に言及し、対処しないことは、プロセス全体の信頼性を損なう」と批判しました。
ITニュースとしての考察:テクノロジーの役割と未来
政治的交渉が難航し、具体的な合意が先送りされる中で、気候変動対策におけるテクノロジーの役割がこれまで以上に注目されます。今回のCOP30が政治的な期待を裏切ったとしても、持続可能な未来を実現するための技術革新への期待は否応なしに高まることとなるでしょう。
クリーンエネルギー技術の開発・導入、データ駆動型のアプローチによる排出量削減、そして環境モニタリングのためのAIやIoTの活用など、IT業界が貢献できる領域は広範にわたります。COP30で明確なロードマップが示されなかった現状は、むしろテクノロジーの力で「実施」を加速させるための新たな機会を生み出す可能性を秘めています。
元記事: https://www.theverge.com/report/828270/un-climate-change-negotiations-fizzle
