はじめに
米メディアThe Vergeのシニアレビュアー、アリソン・ジョンソン氏が、ドナルド・トランプ氏の名前を冠したワイヤレスサービス「トランプ・モバイル(Trump Mobile)」を実際に利用した体験談を報告しました。5Gサービスを謳うこのMVNO(仮想移動通信事業者)は、そのブランド名とは裏腹に、通信品質においては意外な結果を示しました。
通信品質とパフォーマンス
ジョンソン氏の報告によると、トランプ・モバイルの通信サービスはT-Mobileのネットワークを使用しており、シアトル地域では非常に良好なパフォーマンスを発揮したとのことです。彼女はSamsung Galaxy S25を使用し、ほとんどの場面で5Gの表示を確認。驚くべきことに、自身のVerizonプラン(S25 Plus使用)よりも、トランプ・モバイル経由でのダウンロード速度が上回る結果となりました。通信サービス自体は「問題なく機能した」と評価されています。
ユーザー体験と「不快感」
通信品質とは対照的に、ジョンソン氏はサービスを利用する上で「不快感(icky)」と表現される感情を抱いたと述べています。SIMカード設定や通知バーに表示される「Trump」というネットワーク表示が、日常的な利用シーン(公共図書館、公共交通機関、書店、食料品店など)で心理的な抵抗を生じさせたようです。彼女は、トランプ・オーガニゼーションの価値観に対する懸念を抱きながらも、ワイヤレスサービス自体の機能性には一定の評価を与えています。
運用上の問題点
通信品質の安定とは裏腹に、トランプ・モバイルの運用面にはいくつかの「小さな危険信号」が指摘されています。初期のSIMカードの紛失問題(後にカスタマーサービスによって解決)に始まり、カスタマーサービスの営業時間が公式サイトとSIMキットの記載で異なっていたり、実際の電話対応時間もさらに異なるといった情報の不一致が報告されています。
- 公式サイトに記載されたアクティベーションページ(TrumpMobile.com/activate)が404エラーを返す。
- SIMカードのインストール方法を説明する動画がAI生成されたように見える(ナレーションも不自然)。
これらの点は、サービス全体が「急ごしらえで一貫性に欠ける」印象を与えているとジョンソン氏は評しています。
価格設定とプラン
トランプ・モバイルのプラン料金は、月額47.45ドルと設定されています。これは「トランプ氏の大統領在任期間への可愛いらしい言及」と評されていますが、税金を追加すると最終的には月額51.99ドルになるとのことです。ジョンソン氏の既存のVerizonプランと比較して、「はるかに高い料金を支払っている」と述べられており、トランプ・モバイルが価格面で競争力を持つ可能性も示唆されています。
結論
トランプ・モバイルは、T-Mobileの既存インフラを利用するMVNOとして、通信品質自体は十分に機能し、既存大手キャリアを上回るパフォーマンスを見せる場面もありました。しかし、ブランドイメージに起因するユーザーの心理的な抵抗や、情報の一貫性の欠如、アクティベーションプロセスの不備など、運用面での課題が浮き彫りになりました。「急ごしらえで一貫性に欠ける」という評価は、サービスの本質的な側面をよく表していると言えるでしょう。
元記事: https://www.theverge.com/tech/829414/trump-mobile-mvno-wireless-service-test
