AWS re:Invent 2025 主要発表まとめ:AIエージェントとチップ技術革新がビジネスを変革

AWS re:Invent 2025、AIとエージェント技術で未来を拓く

Amazon Web Services(AWS)の年次技術カンファレンス「AWS re:Invent 2025」が閉幕し、膨大な数の新製品発表が行われました。今年のテーマはエンタープライズ向けAIに集約され、特に顧客がAIエージェントをより細かくカスタマイズし、自律的に機能させるためのアップグレードが焦点となりました。AWSは、ユーザーから学習し数日間独立して作業できるAIエージェントも発表しています。

12月2日のキーノートでは、AWS CEOのMatt Garman氏がAIエージェントがAIの「真の価値」を引き出すと強調しました。同氏は、「AIアシスタントは、タスクを実行し、あなたの代わりに自動化できるAIエージェントに道を譲り始めています。ここからAI投資による実質的なビジネスリターンが見え始めるでしょう」と述べました。

AIエージェント機能の大幅な進化

AIエージェントに関するニュースがre:Invent 2025を通じて継続的に発表される中、AWSはAIエージェント構築プラットフォーム「AgentCore」の新たな機能強化を発表しました。注目すべきは、開発者がAIエージェントの境界を容易に設定できる「Policy in AgentCore」です。

  • AIエージェントがユーザーに関する情報をログに記録し、記憶する機能が追加されました。
  • 顧客がエージェントを評価できるよう、13種類の事前構築済み評価システムが提供されます。

さらに、AWSは3つの新しいAIエージェント「Frontier agents」を発表しました。特に注目すべきは、「Kiro自律エージェント」です。このエージェントはコードを記述し、チームの作業方法を学習することで、数時間から数日間、ほぼ自律的に作業できるように設計されています。その他、コードレビューなどのセキュリティプロセスを処理するエージェントと、新しいコードのプッシュ時のインシデント防止などのDevOpsタスクを実行するエージェントも発表され、これらはプレビュー版が現在利用可能です。

次世代AIトレーニングチップ「Trainium3」とNvidia互換性

AWSは、新しいAIトレーニングチップ「Trainium3」と、それを搭載するAIシステム「UltraServer」を発表しました。このアップグレードされたチップは、AIトレーニングと推論の両方で最大4倍のパフォーマンス向上、そして40%のエネルギー使用量削減という驚異的なスペックを誇ります。

また、AWSは「Trainium4」の開発も進めていることを示唆しました。これは、Nvidiaのチップと連携できるようになる予定で、今後のAIインフラストラクチャにおける相互運用性の可能性を示しています。

Novaモデルファミリーの拡充とカスタマイズ性

AWSは、Nova AIモデルファミリーに4つの新しいAIモデルを展開しています。そのうち3つはテキスト生成モデルで、もう1つはテキストと画像を生成できるモデルです。さらに、「Nova Forge」という新サービスも発表されました。これにより、AWSクラウドの顧客は、事前にトレーニング済み、中間トレーニング済み、またはトレーニング後のモデルにアクセスし、それらを独自の専有データで追加学習させることができます。AWSは、この柔軟性とカスタマイズ性を大きな強みとしています。

Lyftが示すAIエージェントのビジネス効果

今回のイベントでは、多くのAWS顧客が成功事例を共有しました。配車サービスのLyftは、Amazon Bedrockを介してAnthropicのClaudeモデルを使用し、ドライバーと乗客からの質問や問題を処理するAIエージェントを開発しました。このAIエージェントの導入により、平均解決時間が87%短縮されたと報告されています。また、LyftはAIエージェントのドライバー利用率が今年70%増加したとも述べており、AIエージェントがビジネスにもたらす具体的な効果を証明しています。

プライベートデータセンター向け「AI Factory」

Amazonは、大企業や政府機関が自身のデータセンター内でAWS AIシステムを実行できる「AI Factory」も発表しました。このシステムはNvidiaとの提携で設計され、Nvidiaの技術とAWSの技術の両方を含んでいます。企業はNvidia GPUを搭載することもできますが、Amazonの最新の自社製AIチップであるTrainium3を選択することも可能です。このシステムは、政府や多くの企業がデータを管理し、AIを利用するためであっても共有したくないというデータ主権のニーズに対応するためのAmazonの取り組みです。


元記事: https://techcrunch.com/2025/12/02/all-the-biggest-news-from-aws-big-tech-show-reinvent-2025/