Amazon Ring、AI顔認識機能を導入もプライバシー懸念が浮上

RingがAI顔認識「Familiar Faces」を導入

Amazon傘下のスマートドアベルメーカーRingは、物議を醸すAIパワードの顔認識機能「Familiar Faces(おなじみの顔)」を米国全土のRingデバイス所有者向けに展開すると発表しました。この機能は、今年9月に発表されて以来、プライバシーに関する議論を呼んでいます。

この機能により、最大50人までの頻繁に訪問する人物(家族、友人、隣人、配達員、家事サービススタッフなど)をカタログ化して識別できるようになります。Ringアプリで一度人物を登録すると、デバイスはその人物がカメラに近づいた際に認識し、通常の「人物がドアの前にいます」という通知の代わりに、「ママが玄関にいます」といったパーソナライズされた通知をユーザーに送信します。

Ringは、この機能がデフォルトで有効になるわけではなく、ユーザーがアプリの設定で手動でオンにする必要があると強調しています。また、ユーザーは自分の出入りに関するアラートを無効にするなど、顔ごとにアラート設定を調整することも可能です。

賛否両論の機能と広がる懸念

しかし、この新機能に対しては、米国の消費者保護団体である電子フロンティア財団(EFF)や複数の上院議員から強い反対意見が表明されています。特にイリノイ州、テキサス州、オレゴン州ポートランドでは、既存のプライバシー法によりこの機能の展開が阻止されています。

EFFは、Amazonが提供する個人データ暗号化の保証や、法執行機関へのデータ提供に関する技術的制約の主張に対し、懐疑的な見方を示しています。特に、近隣のRingカメラネットワークを横断して行方不明のペットを検索する「Search Party」機能との類似性を指摘し、Ringが特定の人物の所在を追跡できないとするAmazonの主張に疑問を呈しています。

Amazonのプライバシー保証と過去の問題

Amazonは、顔データが暗号化され、他者と共有されることはなく、登録されていない顔のデータは30日後に自動的に削除されると主張しています。また、AIモデルのトレーニングにはこのデータを使用しないとも述べています。

しかし、Amazonには法執行機関との提携や、過去のセキュリティ上の問題という履歴があります。例として、かつては警察や消防がRing Neighborsアプリを通じて顧客のドアベル映像を直接Amazonに要求できる体制でした。さらに、Ringは2023年に、従業員や契約業者が長年にわたり顧客の動画に広範かつ無制限にアクセスしていたとして、米連邦取引委員会(FTC)から580万ドルの罰金を科されました。

また、Neighborsアプリがユーザーの自宅住所や正確な位置情報を露呈させたり、ユーザーのRingパスワードがダークウェブに流出したりといった問題も過去に発生しています。

ユーザーへのアドバイスと今後の展望

Amazonの法執行機関との協力姿勢やセキュリティ実績の悪さを考慮すると、専門家はRingの顔認識機能の利用には細心の注意を払うよう推奨しています。可能であれば機能を無効にし、人名を正確に特定する際には特に慎重になるべきだと忠告しています。「すべてのものにAIアップグレードが必要なわけではない」という声も聞かれます。

この機能の導入は、利便性とプライバシーのバランス、そしてAI技術が社会に与える影響について、改めて議論を巻き起こしています。消費者は、自身のスマートホームデバイスが収集するデータとその利用方法について、より一層注意を払う必要があります。


元記事: https://techcrunch.com/2025/12/09/amazons-ring-rolls-out-controversial-ai-powered-facial-recognition-feature-to-video-doorbells/