はじめに:自動運転への道のり
Rivianのパロアルトオフィスを横切るロボットが立ち往生する光景は、自動運転技術開発がいかに困難であるかを象徴する出来事でした。2025年12月12日、Rivianが開催した「Autonomy & AI Day」で披露された自律走行車「Large Driving Model(LDM)」のデモは、その難しさを改めて浮き彫りにします。
筆者が体験した15分間のデモドライブでは、2025年型R1S SUVが自律走行を行いましたが、テスラ車が前方を横切った際には、従業員が介入しかけるほど急ブレーキを踏む場面も。また、道路工事で片側通行になっている場所では、実際にシステムが解除され、運転者が手動で操作する「ディスエンゲージメント」も発生しました。これは開発途上であることを示唆するものの、Rivianが従来のルールベースシステムから抜本的にアプローチを変えたことを考慮すれば、注目に値する進展です。
2021年の静かなる転換:AI中心のアプローチへ
RivianのRJ Scaringe CEOは、従来の運転支援システムが「非常に決定論的で、人間が記述した制御戦略の結果であった」と説明します。しかし、2021年に「トランスフォーマーベースの人工知能(AI)」が台頭するのを見て、同社は静かにチームを再編成し、自動運転プラットフォームをAI中心の世界に向けてゼロから再設計しました。
この新しいグラウンドアップの運転ソフトウェアは、2024年にNvidiaのOrinプロセッサを搭載した第2世代R1車両に導入されました。Scaringe氏は「データが本格的に流れ込み始めてから、劇的な進歩が見られた」と語り、このAIアプローチが成果を上げ始めていることを示唆しています。
Rivianの「Large Driving Model(LDM)」と今後の展開
Rivianは、フリートデータを用いたLDMの高速トレーニングにより、今月末には「Universal Hands-Free」を展開する予定です。これにより、米国とカナダの350万マイルの道路(視認可能な車線がある場合)で、Rivianのオーナーはハンドルから手を放して運転できるようになります。
さらに、2026年後半には、筆者がデモで体験したような「ポイント・ツー・ポイント」運転(目的地を設定すると車両が自律的に走行する機能)が消費者向けに提供される計画です。
「Eyes Off」と「Hands Off」の課題とR2戦略
2026年末までに、Rivianはより小型で手頃な価格のR2 SUVを市場に投入する際に、Nvidiaチップから新しいカスタム自律走行コンピュータとLiDARセンサーを搭載する予定です。これにより、最終的には「Eyes Off」(運転者が道路から目を離しても良い)運転が可能になります。
しかし、この新しい自律走行コンピュータとLiDARの準備はR2の発売から数か月後になるため、初期のR2購入者は「Eyes Off」運転を利用するために待つ必要があります。Scaringe CEOは、このタイムラインのずれについて、「完璧な世界ではすべてが同時に進行するが、車両のタイムラインと自律走行プラットフォームのタイムラインは完全に一致しない」と認めました。同社は、顧客に対してこの情報を事前に開示することで、各自が購入時期を決定できるとしています。
CEOが描く未来のビジョン
Scaringe CEOは、2018年に語った「ハイキングの出発点で降り、終点で車両が迎えに来る」という壮大なビジョンが、数年後には実現可能であると考えています。これは、Rivianの冒険的なブランドイメージに合致するものです。
レベル4自動運転に近づき、LDMが車線のようなガイド機能がない未舗装路など、より複雑なODD(運用設計領域)でトレーニングされるにつれて、このビジョンは現実味を帯びてきます。ただし、Scaringe氏は、「ロッククローリングのようなオフロード自律走行にリソースを投入するつもりはない」と明言し、あくまで「トレイルヘッドまでの移動」に焦点を当てていることを強調しました。
元記事: https://techcrunch.com/2025/12/12/inside-rivians-big-et-on-ai-powered-self-driving/
