はじめに:AI時代のデータセンターの課題
人工知能(AI)技術の急速な進化は、データセンター業界に新たな、そして予期せぬ課題をもたらしています。特に問題となっているのは、AIチップを搭載したサーバーラックの「重さ」です。従来のデータセンターの構造では、この増大する重量を支えることができず、大規模なインフラの刷新が求められています。
AIラックの「重すぎる」現実
データセンターの専門家によると、既存のデータセンターは最新のAIテクノロジーの重量に容易には対応できません。30年前のサーバーラックの平均重量が約400~600ポンド(約180~270kg)だったのに対し、現在では1,250~2,500ポンド(約560~1,130kg)が一般的です。そして、AIに特化したラックはさらに重く、将来的には5,000ポンド(約2.3トン)に達すると予測されています。
重量増加の背景:高密度化と電力需要
AIラックの重量が増加している主な理由は、ラック内により多くの高性能な電子機器が詰め込まれているためです。データ転送の遅延を最小限に抑えるため、GPUやメモリチップが密集して配置されます。これにより、ラックあたりの電力消費量も大幅に増加しています。従来のワークロードが平均10キロワット/ラックだったのに対し、AIワークロードでは最大350キロワット/ラックと35倍にも達することがあります。
高密度化と電力増加は、以下の追加的な重量要因を生み出しています。
- 液体冷却システム: 発熱を抑制するため、冷却プレートや液体が不可欠であり、これが重量に加算されます。
- 太い電源ケーブルやバスバー: 大量の電力を供給するためには、より太く重いケーブルや銅製プレートが必要です。
既存データセンターの限界
旧来のデータセンターの構造は、こうした新たな要求に対応することができません。多くの施設に採用されている「フリーアクセスフロア」は、静荷重で1平方フィートあたり約1,250ポンド(約6,100kg/㎡)が上限であり、新しいAIラックの重量には全く足りません。
構造的な問題に加え、ラック自体の高さも課題となっています。過去20年でラックの高さは6フィート(約1.8m)から9フィート(約2.7m)に増加しており、既存の産業用ドアフレームや貨物エレベーターでは、AIラックの搬入・移動が困難になっています。専門家は「ほとんどの場合、建物をブルドーザーで取り壊し、ゼロからやり直すことになるだろう」と述べています。
建設ラッシュの裏側:AIが牽引する新たなインフラ投資
AIの優位性を確保するため、大手テクノロジー企業はAI専用のデータセンターを積極的に建設しています。OpenAIやMicrosoftのような企業は、自社施設だけでなく、CoreWeaveなどのコロケーションプロバイダーのAI特化型施設も利用しています。過去2年間におけるデータセンター建設の急増は、「AIが全てを貪り尽くしている」現状を色濃く反映しています。
レガシーデータセンターの役割と将来
AIワークロードの急増にもかかわらず、従来のデータセンターの重要性は依然として高いとされています。大学、病院、中規模企業、地方自治体などは、AIではない通常のデータ(個人の写真なども含む)を保存する必要があり、レガシーなデータセンター環境が「なくなることは決してない」と専門家は指摘しています。AI専用施設が台頭する一方で、既存のインフラも引き続き重要な役割を担うことになるでしょう。
元記事: https://www.theverge.com/ai-artificial-intelligence/844966/heavy-ai-data-center-buildout
