AmazonとPerplexity、AIブラウザを巡る新たな戦い:代理購入のセキュリティリスク浮上

AIブラウザ「Comet」が引き起こす摩擦

AI技術の進化は、私たちのオンラインショッピング体験を根本から変えようとしています。しかし、その変革の最前線で、大手eコマース企業AmazonとAIスタートアップPerplexityの間で新たな論争が勃発しています。Perplexityが提供するAIブラウザ「Comet」が、ユーザーに代わってAmazonを含む様々なウェブサイトから商品を自動購入する機能を提供していることが、この対立の核心です。

Amazonの懸念とPerplexityの反論

Amazonは、Perplexityに対し、Cometによる顧客の代理購入を停止するよう「繰り返し要請」したと発表しました。Amazonの主張は、このような第三者アプリケーションによる購入が「著しく劣化したショッピングおよび顧客サービス体験」を提供し、サービスプロバイダーの参加決定を尊重すべきだというものです。これは、AIエージェントがユーザーの意図と異なる行動を取ったり、セキュリティ上の脆弱性を生み出したりする可能性への懸念を示唆しているとも解釈できます。

一方、PerplexityはAmazonの要請を「いじめ」と非難し、AmazonのCEOアンディ・ジャシーが以前に「第三者エージェントとの提携」を期待すると発言していたことと矛盾すると主張しています。Perplexityは、Cometの機能が「より簡単なショッピングは、より多くの取引とより幸せな顧客を意味する」というAmazonの利益に資するはずだと反論。彼らは、Amazonが広告やスポンサー付きの結果、アップセルを通じて顧客の購買決定に影響を与えることに固執していると指摘しています。

代理購入機能のセキュリティ的側面

この論争は、単なるビジネス上の対立に留まらず、AIエージェントがユーザーの個人情報や決済情報にアクセスし、自律的に行動する際のセキュリティとプライバシーに関する重要な問いを投げかけています。AIがユーザーに代わって購入を行う際、そのプロセスがどのように保護され、不正アクセスや誤操作からユーザーがどのように守られるのかは、極めて重要な論点です。

Amazonが指摘する「劣化した体験」には、セキュリティ上のリスクも含まれる可能性があります。例えば、AIが誤った商品を注文したり、意図しない情報漏洩が発生したりする可能性も考えられます。AIエージェントの行動範囲が広がるにつれて、その信頼性と透明性、そしてユーザーの制御権をどのように確保するかが、今後のAI技術の普及において不可欠となるでしょう。

今後の展望

この「AIウェブブラウザ戦争」は、AIが私たちの日常生活に深く浸透する中で、企業がどのように協力し、あるいは競争していくかを示す一例です。同時に、AIエージェントがユーザーの代理として行動する際の倫理的、法的、そしてセキュリティ上の枠組みをどのように構築していくかという、より大きな課題を浮き彫りにしています。この問題の進展は、AI技術の未来におけるセキュリティとプライバシーのあり方を形作る上で、重要な意味を持つことになりそうです。


元記事: https://www.theverge.com/news/813755/amazon-perplexity-ai-shopping-agent-block