『アウター・ワールド2』が描く企業風刺と、マイクロソフト傘下となった開発元の皮肉な現実

『アウター・ワールド2』:企業支配の深化と皮肉な現実

Obsidian Entertainmentが開発する人気RPGシリーズの最新作『アウター・ワールド2』は、その鋭い企業風刺をさらに深めています。ゲーム内では、小売ブランドのAuntie CleoとSpacer’s Choiceが合併し「Auntie’s Choice」が誕生。これは単なる店舗の集合体ではなく、従業員を農奴のように扱う封建的な権力として描かれ、その軍事事業は表向きの「やや役立つガラクタ」を売る事業よりもはるかに重要視されています。

この架空の企業再編は、現実世界のビジネスニュースと奇妙なほどに符合します。開発元のObsidianは、『アウター・ワールド2』の開発開始直前の2019年に、マイクロソフトによるゲーム開発会社買収の一環として傘下に入りました。巨大企業の一部となったObsidianが、巨大企業の支配と全体主義を風刺するゲームを制作するという、まさに皮肉な状況が生まれています。

開発者が語る「権力」と「システム」の物語

クリエイティブディレクターのレナード・ボイヤルスキー氏とゲームディレクターのブランドン・アドラー氏は、特定の時事問題に直接反応するゲームを作っているわけではないとしながらも、本作のシナリオが時宜を得ていることを認めています。ボイヤルスキー氏は、「ティム(・ケイン、共同制作者)と私は常に、人々が権力を手にしたときに何が起こるかをテーマにしたゲームを作ってきました」と語ります。

彼らは、権力を持つ人々でさえシステムの犠牲者であり、誰もが「どうしてこんなことになったのか分からない。最善を尽くすしかない」という状況に陥ると指摘。また、ボイヤルスキー氏は「私たちは皆、自分自身に物語を語り聞かせます。それが世界、現実に対処する方法です。しかし、誰かがその物語を乗っ取ると、非常に簡単にあなたをコントロールできるのです」と述べ、情報操作による支配の危険性を示唆しています。

「正確省」が示す情報統制の恐怖

本作の「セキュリティニュース」として特に注目すべきは、ゲーム序盤で登場する「正確省(Ministry of Accuracy)」です。この機関は、その名の通りプロパガンダを目的とした組織であり、地域中の報告書を「浄化」し、植民地の支配勢力である「プロテクトレート」のメッセージに沿うように改ざんします。これは、情報がどのように操作され、真実が歪められるかをプレイヤーに突きつけるものです。

マイクロソフトの広報担当者が、Obsidianのイスラエル国防省とのビジネスに関する議論を「ゲームに焦点を当てる」よう求めたという記事中の記述は、この「正確省」の描写と現実世界での情報統制の試みを重ね合わせ、企業や権力による言論統制の潜在的な危険性を浮き彫りにしています。

企業傘下での創作活動と風刺の意義

ボイヤルスキー氏は、マイクロソフトに買収されたことについて「最初のゲームを制作中に企業権力に反対する発言をしていたのに、マイクロソフトに買収されたという皮肉は、私たちにとって見過ごせないものでした」と率直に語っています。しかし、マイクロソフトからは「何の反発もなく、このゲームを作ることを支持してくれている」とも述べており、創作の自由が保たれていることを強調しています。

それでもなお、『アウター・ワールド2』が描く企業と全体主義の風刺は、現代社会における巨大企業の台頭、情報操作、そして個人の自由が脅かされる可能性といった、セキュリティ上の懸念と深く結びついています。ゲームという媒体を通じて、これらの複雑な問題を問いかけるObsidianの姿勢は、現代に生きる私たちにとって重要な示唆を与えています。


元記事: https://www.theverge.com/entertainment/809022/the-outer-worlds-2-corporate-satire-interview-xbox